"「なんて言えばいいの?」 巧はサキカに問いた"
"「なんて言えばいいの?」
巧はサキカに問いた。
「『僕は雨宮 巧です』……って言える?」
サキカはオルス語……中央の国の言葉を教える。
「ぼ、僕ハ雨宮 巧でス……?」
買日本樓風險 言のオルス語だったが、これなら聞き取れるだろう。
サキカは深く頷くと立ち上がった。
そして巧と共にレイト達のもとへと歩み寄る。
「ほら、言って?」
「……僕ハ、雨宮 巧デス」
もごもごと小さな声で言った巧だったが、レイト達にはしっかりと聞き取れたようだ。
「あぁ、宜しくな」
「宜しく、巧」
「…………宜しく」
「宜しくお願いしますっ、巧君!」
「おぅっ!!」
アーク、有舞、リリス、ユリアス、レイトが返事をする。
しかし、ここでまた驚くべき事実がわかった。
「……宜しくお願いします」
ガイアがジパング語を話したのだ。
このことを知っていたサキカ以外の皆は、目を丸くしてガイアを見る。
「お前も話せるのかよっ!」
アークが半分ツッコミのような問いをした。
「ああ……まあな」
ガイアがジパング語を話せるのには勿論理由があるのだが、それはまた後ほど語ることにしよう。
「ってか、サキカってもしかして東の国の人?凄い流暢なんだけど……」
レイトがサキカに問う。
サキカは首を振った。
「違うよ。昔、住んでいたことがあるだけ……」
サキカの困ったような笑いに、レイトはそれ以上追求するのを諦めた。
「さあ、帰るわよ!」
有舞の一声で来た道を歩きはじめる。
巧は一度だけ、自分が二日間過ごした木の影を振り返った。
親には捨てられてしまった。
だが、優しい笑顔のお兄ちゃんに拾ってもらった。
(……嬉しい)
巧は仄かに笑みを浮かべ、数日間身を隠していた場所にありがとうと告げて、その場を後にした。
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