2023年09月28日
副長は日向とのトラブ
副長は日向とのトラブルについて、白虎隊の隊士たちに告げるか告げぬか、告げるとすればどう告げるかを相談しにきたらしい。
たしかに、俊春のいうとおりである。
日向はムダにプライドが高そうだ。みずから「こんなことがあってひどい目にあった」などと、自分の部下に告げるはずはない。
「そうだな、ぽち」
副長は一つうなずき、同意した。
「いま一つのご用件は……」
俊春はかっこかわいいを、久吉と沢の方へと向けた。
「久吉殿、沢殿。みなさんで丹精こめてつくった料理でございます。https://keizo.anime-navi.net/Entry/56/ https://alicia034b.blogger.ba/2023/05/02/%e3%81%b8%e5%90%91%e3%81%8b%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%84%e3%82%8b%e3%81%ae%e3%81%a7%e3%81%af%ef%bc%9f%e3%80%8d/ http://kotone22.blogaholic.se/2023/apr/171084/217671236412431123941243112394123923866312360/ にて立ったまま食するより、部屋で座ってゆっくりお召し上がりください」
俊春は軽く頭をさげ、二人にすすめる。
なるほど。副長は、久吉と沢にいっしょに喰うよう誘いにきたわけか。
久吉と沢は、たがいにを見合わせた。恐縮しているのが、表情でわかる。
かれらが遠慮するかと思ったが、副長がみずから誘いにきたということもある。
「それでは、お言葉に甘えまして」
沢がいい、二人は頭をさげつつ了承してくれた。
「主計、おぬしも戻って喰ってくれ。手伝ってくれて礼を申す。おぬしの献立は、此度も大当たりだな」
「ぽち、あなたの腕がいいからですよ。これでたまがもどってきたら、はうまい物を喰いすぎて、健康状態をつねに心配しなければならないでしょうね」
そう返すと、俊春は苦笑した。
俊冬は、どうしているだろう。ちゃんと戻ってきてくれるのか?
ある意味人質というわけではないが、俊春がにいるかぎり、俊冬はもどってきてくれると信じたい。
そのとき、俊冬と板橋の刑場で別れる際、かれがおれにいいかけたことがあったことを思いだした。厳密には、おれになにかいったが、喧噪でなにをいったのかききとれなかったのである。
かれはおれに、なにをいったのだろうか。
たしか、「ありがとう」だった。そこまではきこえた。そのあと、「は」ときこえたような気がする。そのあとがきこえなかった。
「主計」
呼ばれてはっとした。俊春が、懐を脅かすぎりぎりのところでじっとみつめている。みえるほうのも、おれをひたとみすえている。
「主計、案ずるな。気まぐれにゃんこは、おぬしのことが大好きだ。否、愛していると申してもいいであろう。ゆえに、かならずやおぬしのもとに戻ってくる」
「はい?おれをあんなにいじりたおしたりいびりたおしているのに?」
「愛しているからこその行動だ。それがにゃんこだ。それを申すなら、副長もだな。おぬしを愛しているからこそ、いびりたおしておられる」
「ちょっ……。そんな小学生男児みたいな心理状態、あの二人にかぎってはありえないでしょう?」
「そして、おぬしもだ。おぬしも二人を愛しすぎていて、いびられたりいじられたりすることがうれしくなる。快感になっていると申しても過言ではないな」
「はああああ?それってドMってことじゃないですか」
「さあっ、はやくお櫃を運んでくれ。みな、飯をまっている」
俊春は、いつも以上に想像の斜め上を爆走しまくっている。
釈然としないまま、おれはお櫃をいくつも抱えて厨をでた。
入口で、相棒がおれをじとーっとみつめているので、「相棒っ、おれはみんなから愛されているみたいだ」っていっておいた。
相棒がどう思ったかはわかるはずもない。
厨から大広間にいくまでの廊下で、宿のと道場主の奥方と娘さんに会った。
「ほんとうにおいしい料理ばかりでした。宿の料理人たちも、これからお客様におだししたいと申しております」
宿のも絶賛してくれたし、母娘も大絶賛してくれた。
ふふん。これも「食の伝道師」たるおれの偉業の一つだな。
思わず、胸をはってしまった。すると、隣で恐縮している俊春が、呆れたようなを送ってきた。
道場主の奥方と娘さんは、そろそろおいとまするという。
「ならば、送りましょう」
「ええ?なにも副長みずからいかなくっても。送り狼になりかねませんし」
送るっていいだした副長にツッコんでしまった。もちろん、後半部分は口のなかでつぶやくにとどめておく。
「なんだとこの野郎?」
「わたしがまいりますよ。ぽちの料理をたらふく堪能しましたので、腹ごなしをせねば。それに、美しい女性二人で夜半にあるきまわるのは危険きわまりありませぬ」
副長によまれるにきまっている。もうすこしで拳固か平手打ちを喰らいそうになった。
なんとそのタイミングで、廊下の角をまわって野村があらわれたではないか。
なんだって?めっちゃドンピシャなタイミングじゃないか。まるで、女性二人がかえるのを見計らってやってきたみたいだ。
「あああ?利三郎、送るっつーおまえが危険きわまりないんだよ」
野村と目糞鼻糞のイケメンは、振り返って怒鳴り散らす。
「わたしが送ります」
そのとき、また一人廊下の角を曲がってあらわれた。
たしかに、俊春のいうとおりである。
日向はムダにプライドが高そうだ。みずから「こんなことがあってひどい目にあった」などと、自分の部下に告げるはずはない。
「そうだな、ぽち」
副長は一つうなずき、同意した。
「いま一つのご用件は……」
俊春はかっこかわいいを、久吉と沢の方へと向けた。
「久吉殿、沢殿。みなさんで丹精こめてつくった料理でございます。https://keizo.anime-navi.net/Entry/56/ https://alicia034b.blogger.ba/2023/05/02/%e3%81%b8%e5%90%91%e3%81%8b%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%84%e3%82%8b%e3%81%ae%e3%81%a7%e3%81%af%ef%bc%9f%e3%80%8d/ http://kotone22.blogaholic.se/2023/apr/171084/217671236412431123941243112394123923866312360/ にて立ったまま食するより、部屋で座ってゆっくりお召し上がりください」
俊春は軽く頭をさげ、二人にすすめる。
なるほど。副長は、久吉と沢にいっしょに喰うよう誘いにきたわけか。
久吉と沢は、たがいにを見合わせた。恐縮しているのが、表情でわかる。
かれらが遠慮するかと思ったが、副長がみずから誘いにきたということもある。
「それでは、お言葉に甘えまして」
沢がいい、二人は頭をさげつつ了承してくれた。
「主計、おぬしも戻って喰ってくれ。手伝ってくれて礼を申す。おぬしの献立は、此度も大当たりだな」
「ぽち、あなたの腕がいいからですよ。これでたまがもどってきたら、はうまい物を喰いすぎて、健康状態をつねに心配しなければならないでしょうね」
そう返すと、俊春は苦笑した。
俊冬は、どうしているだろう。ちゃんと戻ってきてくれるのか?
ある意味人質というわけではないが、俊春がにいるかぎり、俊冬はもどってきてくれると信じたい。
そのとき、俊冬と板橋の刑場で別れる際、かれがおれにいいかけたことがあったことを思いだした。厳密には、おれになにかいったが、喧噪でなにをいったのかききとれなかったのである。
かれはおれに、なにをいったのだろうか。
たしか、「ありがとう」だった。そこまではきこえた。そのあと、「は」ときこえたような気がする。そのあとがきこえなかった。
「主計」
呼ばれてはっとした。俊春が、懐を脅かすぎりぎりのところでじっとみつめている。みえるほうのも、おれをひたとみすえている。
「主計、案ずるな。気まぐれにゃんこは、おぬしのことが大好きだ。否、愛していると申してもいいであろう。ゆえに、かならずやおぬしのもとに戻ってくる」
「はい?おれをあんなにいじりたおしたりいびりたおしているのに?」
「愛しているからこその行動だ。それがにゃんこだ。それを申すなら、副長もだな。おぬしを愛しているからこそ、いびりたおしておられる」
「ちょっ……。そんな小学生男児みたいな心理状態、あの二人にかぎってはありえないでしょう?」
「そして、おぬしもだ。おぬしも二人を愛しすぎていて、いびられたりいじられたりすることがうれしくなる。快感になっていると申しても過言ではないな」
「はああああ?それってドMってことじゃないですか」
「さあっ、はやくお櫃を運んでくれ。みな、飯をまっている」
俊春は、いつも以上に想像の斜め上を爆走しまくっている。
釈然としないまま、おれはお櫃をいくつも抱えて厨をでた。
入口で、相棒がおれをじとーっとみつめているので、「相棒っ、おれはみんなから愛されているみたいだ」っていっておいた。
相棒がどう思ったかはわかるはずもない。
厨から大広間にいくまでの廊下で、宿のと道場主の奥方と娘さんに会った。
「ほんとうにおいしい料理ばかりでした。宿の料理人たちも、これからお客様におだししたいと申しております」
宿のも絶賛してくれたし、母娘も大絶賛してくれた。
ふふん。これも「食の伝道師」たるおれの偉業の一つだな。
思わず、胸をはってしまった。すると、隣で恐縮している俊春が、呆れたようなを送ってきた。
道場主の奥方と娘さんは、そろそろおいとまするという。
「ならば、送りましょう」
「ええ?なにも副長みずからいかなくっても。送り狼になりかねませんし」
送るっていいだした副長にツッコんでしまった。もちろん、後半部分は口のなかでつぶやくにとどめておく。
「なんだとこの野郎?」
「わたしがまいりますよ。ぽちの料理をたらふく堪能しましたので、腹ごなしをせねば。それに、美しい女性二人で夜半にあるきまわるのは危険きわまりありませぬ」
副長によまれるにきまっている。もうすこしで拳固か平手打ちを喰らいそうになった。
なんとそのタイミングで、廊下の角をまわって野村があらわれたではないか。
なんだって?めっちゃドンピシャなタイミングじゃないか。まるで、女性二人がかえるのを見計らってやってきたみたいだ。
「あああ?利三郎、送るっつーおまえが危険きわまりないんだよ」
野村と目糞鼻糞のイケメンは、振り返って怒鳴り散らす。
「わたしが送ります」
そのとき、また一人廊下の角を曲がってあらわれた。
Posted by James Bond at
17:31
│Comments(0)
2023年09月05日
いる。あぁ無論、主計
いる。あぁ無論、主計の大好きなことじゃねぇ。剣術だ」
「ちょっ・・・・・・。副長、誤解を招くようないい方はやめてください」
おれの大好きな、もとい、大尊敬する伊庭だけでなく、薩摩の間で「相馬主計は変な奴」、あるいは「そっち系らしい」って、噂になったら大変だ。しかも、いまだに衆道文化まっ盛りの薩摩である。おれみたいないたいけなは、かっこうの獲物になるだろう。
それこそ、貞操を奪われ、傷物にされてしまい・・・・・・。
そんなことになったら、おれはもうお婿にいけないだろう。
それから、伊庭にあわせる「安心せー。
https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/0348f6d97998b879ad8c5d478c4b81c2 https://blog.naver.com/nav3656/223187993919 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/08/20/002528?_gl=1*1ayivoz*_gcl_au*NDk5MTMyMTEwLjE2OTI0NTg3NDE.&_ga=2.163505788.1346484587.1692458757-1844386703.1692458757 薩摩兵児は、強か、つまり、おなじ薩摩兵児しか抱きもはん」
「ええええっ!」
いつの間にか半次郎ちゃんが横に立っていて、そうぼそりとつぶやかれてしまった。
よまれたばかりか、そんなことをいってくるなんて・・・・・・。
いろんな意味で、ショック大である。
「ひいいいいっ!超ウケる」
永倉は、砂の上にうずくまるほどウケている。
ってか、おれは、薩摩人からすればへたれなんだ。
「と、いうわけだ。ぽち、愉しんでくれ。一人をのぞいて、この面子だ。ちょっとは愉しめるであろう。一応、渡しておく。おまえのだ。指一本でいけるところでも、相手の矜持を傷つけるようなことは本意ではなかろう?」
副長は、おれのショックをよそにさっさと話しをまとめている。
口の形をおおきくして俊春にそう告げた後に、左腰から愛刀の「兼定」を鞘ごと抜いて俊春に差しだす。
なるほど・・・・・・。
副長は、俊春に気分転換をさせたいわけだ。半次郎ちゃんの本意に添い、それを利用して俊春を愉しませようと・・・・・・。
じつに、副長らしいアイデアじゃないか。
ってか、『一人をのぞいて、この面子』?
なるほど・・・・・・。
を向ける。それから、じつにうれしそうな笑みを浮かべた。
「かようにうまい料理、喰らってよいのでしょうか?傲慢で自分勝手で日の本、否、この世のなかで一番くそったれの兄に、このことがしられでもすれば、わたしは殺されてしまうでしょう」
かれはおれたち全員にをはしらせてから、脚許でお座りしている相棒をみおろし、頭をなでた。それから副長にを戻し、ささやくように予言する。
「そりゃぁ大変だ」
「たしかに、大事だ」
「ってか、たしかにありえそうですね、それ」
副長と永倉とおれの言葉がかぶった。
「案ずるな。だれも告げぬであろうよ。すくなくとも、ここにいる面子で、この後たまに会うのは、おれと主計、それから兼定だけだ」
俊春は、副長の中途半端な気休めに素直にうなずく。
「あっ、たまというのは、あなた方が「眠り龍」と認識している、俊冬殿の二つ名です」
「気分屋で、手に負えぬにゃんこです」
薩摩勢へ補足説明をすると、俊春がさらに補足してきた。ってか、必要ないのに、俊冬がいないからといってしまくっている。
兄がいなくて力がでないはずなのに、悪口になるとパワー全開するらしい。
正直、ここでうまい料理を喰らうことより、兄貴にたいして悪口雑言のかぎりをつくしまくったことのほうが、殺害の動機になると思うのだが。
「では、遠慮なくお借りいたします」
「はやく借りちまえ、ぽち。土方さんがいらぬ気を起こすまえにな」」を帯びる。
そして相棒に、副長のもとへゆくよう合図送ってから、うしろへ飛び退った。
たいしてバネをきかしたようにはみえなかった。
ただフツーに立っている姿勢からである。しかも脚場が砂という悪条件で、かれはゆうに7、8mはうしろへ飛んだのである。
これだけで圧倒されてしまう。
黒田が口笛をふいた。
で、俊春をにらみつけている。
「あんなのは、ぽちにすればなんでもないことだ。半次郎ちゃんは身にしみてわかっているだろうが、あいつの強さは、あんたらが想像している以上、否、はるかかなたのものだ。それこそ、武神ってのがいるとすれば、まさしくそれだ。一人一人かかっていったところで、しょせん、糞の役にも立ちゃしない。おれと主計が囮になるから、あんたらはできるだけ間をおかずに攻めたててくれ」
永倉の提案は、意外にもすんなり受け入れられた。黒田あたりが、「おまえの申すことなど、きいてたまるか」的なことをいうかと思いきや、素直にうなずいている。
黒田もふくめ、三人とも永倉の力もまた、認めているにちがいない。
三人とも、わかっているんだ。
永倉もまた、すごい剣士だということを。
そして、おれたちはいっせいに腰から得物を抜き放った。
ちらりと薩摩勢に
「いまん、みたか?すげじゃなかと?」
かれは同意を求めるように、半次郎ちゃんと有馬を振り返る。が、二人ともマジな
永倉のいうとおりである。副長には、ぜひとも立会人としてこの戦いを見守っていていただきたい。
永倉とおれの切なる願いのなか、俊春は副長から「兼定」を受け取った。
それから、かれはそれを眼前にかかげた。しばし瞼を閉じ、祈りか感謝かをつぶやいてから左腰に「
俊春は、副長の口許からおれたちへ
「ちょっ・・・・・・。副長、誤解を招くようないい方はやめてください」
おれの大好きな、もとい、大尊敬する伊庭だけでなく、薩摩の間で「相馬主計は変な奴」、あるいは「そっち系らしい」って、噂になったら大変だ。しかも、いまだに衆道文化まっ盛りの薩摩である。おれみたいないたいけなは、かっこうの獲物になるだろう。
それこそ、貞操を奪われ、傷物にされてしまい・・・・・・。
そんなことになったら、おれはもうお婿にいけないだろう。
それから、伊庭にあわせる「安心せー。
https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/0348f6d97998b879ad8c5d478c4b81c2 https://blog.naver.com/nav3656/223187993919 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/08/20/002528?_gl=1*1ayivoz*_gcl_au*NDk5MTMyMTEwLjE2OTI0NTg3NDE.&_ga=2.163505788.1346484587.1692458757-1844386703.1692458757 薩摩兵児は、強か、つまり、おなじ薩摩兵児しか抱きもはん」
「ええええっ!」
いつの間にか半次郎ちゃんが横に立っていて、そうぼそりとつぶやかれてしまった。
よまれたばかりか、そんなことをいってくるなんて・・・・・・。
いろんな意味で、ショック大である。
「ひいいいいっ!超ウケる」
永倉は、砂の上にうずくまるほどウケている。
ってか、おれは、薩摩人からすればへたれなんだ。
「と、いうわけだ。ぽち、愉しんでくれ。一人をのぞいて、この面子だ。ちょっとは愉しめるであろう。一応、渡しておく。おまえのだ。指一本でいけるところでも、相手の矜持を傷つけるようなことは本意ではなかろう?」
副長は、おれのショックをよそにさっさと話しをまとめている。
口の形をおおきくして俊春にそう告げた後に、左腰から愛刀の「兼定」を鞘ごと抜いて俊春に差しだす。
なるほど・・・・・・。
副長は、俊春に気分転換をさせたいわけだ。半次郎ちゃんの本意に添い、それを利用して俊春を愉しませようと・・・・・・。
じつに、副長らしいアイデアじゃないか。
ってか、『一人をのぞいて、この面子』?
なるほど・・・・・・。
を向ける。それから、じつにうれしそうな笑みを浮かべた。
「かようにうまい料理、喰らってよいのでしょうか?傲慢で自分勝手で日の本、否、この世のなかで一番くそったれの兄に、このことがしられでもすれば、わたしは殺されてしまうでしょう」
かれはおれたち全員にをはしらせてから、脚許でお座りしている相棒をみおろし、頭をなでた。それから副長にを戻し、ささやくように予言する。
「そりゃぁ大変だ」
「たしかに、大事だ」
「ってか、たしかにありえそうですね、それ」
副長と永倉とおれの言葉がかぶった。
「案ずるな。だれも告げぬであろうよ。すくなくとも、ここにいる面子で、この後たまに会うのは、おれと主計、それから兼定だけだ」
俊春は、副長の中途半端な気休めに素直にうなずく。
「あっ、たまというのは、あなた方が「眠り龍」と認識している、俊冬殿の二つ名です」
「気分屋で、手に負えぬにゃんこです」
薩摩勢へ補足説明をすると、俊春がさらに補足してきた。ってか、必要ないのに、俊冬がいないからといってしまくっている。
兄がいなくて力がでないはずなのに、悪口になるとパワー全開するらしい。
正直、ここでうまい料理を喰らうことより、兄貴にたいして悪口雑言のかぎりをつくしまくったことのほうが、殺害の動機になると思うのだが。
「では、遠慮なくお借りいたします」
「はやく借りちまえ、ぽち。土方さんがいらぬ気を起こすまえにな」」を帯びる。
そして相棒に、副長のもとへゆくよう合図送ってから、うしろへ飛び退った。
たいしてバネをきかしたようにはみえなかった。
ただフツーに立っている姿勢からである。しかも脚場が砂という悪条件で、かれはゆうに7、8mはうしろへ飛んだのである。
これだけで圧倒されてしまう。
黒田が口笛をふいた。
で、俊春をにらみつけている。
「あんなのは、ぽちにすればなんでもないことだ。半次郎ちゃんは身にしみてわかっているだろうが、あいつの強さは、あんたらが想像している以上、否、はるかかなたのものだ。それこそ、武神ってのがいるとすれば、まさしくそれだ。一人一人かかっていったところで、しょせん、糞の役にも立ちゃしない。おれと主計が囮になるから、あんたらはできるだけ間をおかずに攻めたててくれ」
永倉の提案は、意外にもすんなり受け入れられた。黒田あたりが、「おまえの申すことなど、きいてたまるか」的なことをいうかと思いきや、素直にうなずいている。
黒田もふくめ、三人とも永倉の力もまた、認めているにちがいない。
三人とも、わかっているんだ。
永倉もまた、すごい剣士だということを。
そして、おれたちはいっせいに腰から得物を抜き放った。
ちらりと薩摩勢に
「いまん、みたか?すげじゃなかと?」
かれは同意を求めるように、半次郎ちゃんと有馬を振り返る。が、二人ともマジな
永倉のいうとおりである。副長には、ぜひとも立会人としてこの戦いを見守っていていただきたい。
永倉とおれの切なる願いのなか、俊春は副長から「兼定」を受け取った。
それから、かれはそれを眼前にかかげた。しばし瞼を閉じ、祈りか感謝かをつぶやいてから左腰に「
俊春は、副長の口許からおれたちへ
Posted by James Bond at
18:53
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