2023年12月24日
為三郎は十二,三歳といった
為三郎は十二,三歳といったところだろうか。
その年齢で父親を悪く言われるのは辛いことだろう。
分かりたくなくても嫌みの意味を理解出来てしまう。
三津だってここに来るだけで功助とトキが陰口を叩かれたり,嫌がらせを受けるのは耐えられない。
為三郎の気持ちは理解出来るつもりだ。
『それでも八木さん家に行かれへんのはこっちの事情やし申し訳ないなぁ…。』
いわゆる大人の都合ってやつだ。
悪い気がしていた三津はふと昨日の事を思い出した。
「そうや為三郎はんがこっち来たら?https://highforum.net/call-and-put-another-trading-4-strategies-for-long-term-investors-to-purchase-and-vend/ https://highforum.net/trade-stocks-commission-free-fxtm-global-online-trading/ https://newbacklink.com/call-and-put-other-trading-4-strategies-for-long-term-investors-to-buy-and-vend/
お梅さんは勝手口に来てはったで?」
お梅が来たのだから為三郎だって来てもいいじゃないか。
それに折角会えたのにこれっきりじゃ寂しすぎる。
三津が提案すると,それもそうかと納得したのか為三郎はやっと笑顔を見せて今度前川邸に会いに行くと約束した。
その頃,三津と入れ違いに道場にあの男が姿を現した。
「朝から稽古に励んでご苦労ですな。近藤さん。」
自慢の鉄扇で扇ぎながら道場に踏み込む恰幅の良い男。
『来やがったな。この野郎。』
土方の目が鋭く光る。
この男が稽古をしに来るはずがない。
間違いなく別の目的がある。
「何やら新しい女中を雇ったらしいがまだ挨拶に来ておらん。」
筆頭局長の自分に挨拶なしとはどういう了見か。
その女はどこにいる?と探す素振りを見せた。
「これはこれは筆頭局長ともあろうお方が,わざわざ女中ごときの為に足を運ばれるとは。」
くどいぐらいに嫌みったらしい言い方で土方は近藤と芹沢の間に割って入る。
芹沢が三津に目をつけた。
それには総司も気が気でなく,静かに土方の出方を見守る。
「生憎その新入りは礼儀はなってない,仕事も遅い。とても芹沢局長に会わせられる奴じゃないもんで。
お恥ずかしい話,拾って来たのはこの自分。しっかり躾てからそちらに出向きましょう。」
土方の言葉に眉を顰め言葉を返そうとしたが,
「わざわざ道場にいらしたんです。共に稽古に励みませんか?」
土方は芹沢に喋る隙を与えず,稽古に誘った。
竹刀を肩に担ぎ,口角を上げて笑う。
『簡単に会えると思うなよ?』
笑顔の裏で毒づいて早く帰れと念を送る。
芹沢は三津に会えないなら用はないと踵を返した。
芹沢が引き上げて総司はほっと息を吐くが,三津の悪口を並べた土方を無性に殴りたくなった。「褒め言葉はなかなか口にしないのに悪口は止めどなく出て来るものですね。」
お見事ですと目が据わった笑顔で総司が手を叩いた。
「まだ出るぜ?」
聞かせてやろうかと得意げに胸を張る。
『今頃三津はくしゃみを連発してるだろうよ。』
その姿を想像して喉を鳴らして笑った。
問題の中心に居ると言うのにまだ何も分かっていないのは本人だけ。
三津は為三郎と遊ぶ約束をして足取り軽く,箒を引きずりながら前川邸に戻った。
門の前では巡察に向かう隊士たちが整列していた。
「今から巡察ですか?お気をつけて!」
隊を率いている原田と永倉を見つけて駆け寄った。
「この笑顔に見送られちゃあ死ぬわけにはいかねぇな。
お三津,俺の無事を祈って待っててくれ。」
原田は人懐っこい笑みで寄って来た三津の両手を包み込んでぐっと顔を寄せた。
三津は顔の近さを気にする事なく“はい”と返事をした。
その年齢で父親を悪く言われるのは辛いことだろう。
分かりたくなくても嫌みの意味を理解出来てしまう。
三津だってここに来るだけで功助とトキが陰口を叩かれたり,嫌がらせを受けるのは耐えられない。
為三郎の気持ちは理解出来るつもりだ。
『それでも八木さん家に行かれへんのはこっちの事情やし申し訳ないなぁ…。』
いわゆる大人の都合ってやつだ。
悪い気がしていた三津はふと昨日の事を思い出した。
「そうや為三郎はんがこっち来たら?https://highforum.net/call-and-put-another-trading-4-strategies-for-long-term-investors-to-purchase-and-vend/ https://highforum.net/trade-stocks-commission-free-fxtm-global-online-trading/ https://newbacklink.com/call-and-put-other-trading-4-strategies-for-long-term-investors-to-buy-and-vend/
お梅さんは勝手口に来てはったで?」
お梅が来たのだから為三郎だって来てもいいじゃないか。
それに折角会えたのにこれっきりじゃ寂しすぎる。
三津が提案すると,それもそうかと納得したのか為三郎はやっと笑顔を見せて今度前川邸に会いに行くと約束した。
その頃,三津と入れ違いに道場にあの男が姿を現した。
「朝から稽古に励んでご苦労ですな。近藤さん。」
自慢の鉄扇で扇ぎながら道場に踏み込む恰幅の良い男。
『来やがったな。この野郎。』
土方の目が鋭く光る。
この男が稽古をしに来るはずがない。
間違いなく別の目的がある。
「何やら新しい女中を雇ったらしいがまだ挨拶に来ておらん。」
筆頭局長の自分に挨拶なしとはどういう了見か。
その女はどこにいる?と探す素振りを見せた。
「これはこれは筆頭局長ともあろうお方が,わざわざ女中ごときの為に足を運ばれるとは。」
くどいぐらいに嫌みったらしい言い方で土方は近藤と芹沢の間に割って入る。
芹沢が三津に目をつけた。
それには総司も気が気でなく,静かに土方の出方を見守る。
「生憎その新入りは礼儀はなってない,仕事も遅い。とても芹沢局長に会わせられる奴じゃないもんで。
お恥ずかしい話,拾って来たのはこの自分。しっかり躾てからそちらに出向きましょう。」
土方の言葉に眉を顰め言葉を返そうとしたが,
「わざわざ道場にいらしたんです。共に稽古に励みませんか?」
土方は芹沢に喋る隙を与えず,稽古に誘った。
竹刀を肩に担ぎ,口角を上げて笑う。
『簡単に会えると思うなよ?』
笑顔の裏で毒づいて早く帰れと念を送る。
芹沢は三津に会えないなら用はないと踵を返した。
芹沢が引き上げて総司はほっと息を吐くが,三津の悪口を並べた土方を無性に殴りたくなった。「褒め言葉はなかなか口にしないのに悪口は止めどなく出て来るものですね。」
お見事ですと目が据わった笑顔で総司が手を叩いた。
「まだ出るぜ?」
聞かせてやろうかと得意げに胸を張る。
『今頃三津はくしゃみを連発してるだろうよ。』
その姿を想像して喉を鳴らして笑った。
問題の中心に居ると言うのにまだ何も分かっていないのは本人だけ。
三津は為三郎と遊ぶ約束をして足取り軽く,箒を引きずりながら前川邸に戻った。
門の前では巡察に向かう隊士たちが整列していた。
「今から巡察ですか?お気をつけて!」
隊を率いている原田と永倉を見つけて駆け寄った。
「この笑顔に見送られちゃあ死ぬわけにはいかねぇな。
お三津,俺の無事を祈って待っててくれ。」
原田は人懐っこい笑みで寄って来た三津の両手を包み込んでぐっと顔を寄せた。
三津は顔の近さを気にする事なく“はい”と返事をした。
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17:10
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2023年12月13日
そして上石原の次には
そして上石原の次には、土方の故郷である日野宿があった。それぞれに立ち寄らせれば、行軍の速度は遅らせられる。
そうして入城を遅らせる魂胆だった。このことが露呈すれば、裏切り者の謗りを受けることは間違いない。だが、このまま黙って隊が壊滅するのを見ていることは出来なかった。
やっと生き生きとしだした桜司郎を見て、榎本は口角を上げる。
「……にしても、https://www.evernote.com/shard/s330/sh/6dff7ffd-6fd8-0b92-9e4c-b5af7b73c766/xeeVuqKtOviXxjS-2RaNpF_gINpjPyV-rxmzsUCqBeRauA9Wpg4O-eNLNw https://blog.udn.com/79ce0388/180113305 https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202311300000/ 俺が聞いていた新撰組とは随分違うなァ。幕府の思惑くらい見抜けそうなモンなんだが」
「それは……。──私もそう思う。あの副長が分からないとは思えない……」
「へえ……、そんなに土方とやらはキレ者なのかえ」
その問いに、桜司郎は力強く頷いた。すると榎本は興味深そうに目を細める。
それから二人は今後について話しを重ねた。どうやら榎本も徹底抗戦派らしい。いずれは共闘する日が来るかもしれなかった。
「……そろそろ帰るよ。有難う、釜。君のお陰で考えが纏まった。副長とも話してみる」
「おうよ。いつでも来てくりゃれィ!」
どこまでも真っ直ぐな明るさに、桜司郎は微笑む。だが榎本へ背を向けた瞬間、みるみる真剣な顔付きとなった。
暮れ行く空の向こうを見つめながら、屯所へと向かう。 その夜、桜司郎は土方の居室の前に立っていた。背後の庭にある池には月が浮かんでいる。淡い光に背中を押されるように、小さく拳を固めると口を開いた。
「副長。……榊です」
そのように言えば、少しの間の後に「入れ」と促される。意を決した表情で戸へ手を掛けた。
開け放った先には、人影が立っている。無論それは土方だが、その装いに目を丸くした。
「こんな夜にどうした」
「話しがあって……。そ、その……ご恰好は?」
髪はいつもの総髪だが、彼が纏っているのは着物ではなく榎本に似た洋装だった。立襟のシャツにベスト、ズボン。腹が締まらぬのが煩わしいのか、その上から帯を巻いていた。そして肩には羽織のようにフロックコートが掛けられている。
スラッとした体躯であるからか、やけに眩しく見えた。
呆然と部屋の前で立ち尽くす桜司郎の腕を、土方は寒いと言って引く。
「着物で洋式の戦いは出来ねえからな。俺ァ、形から入るんだ。……にしたって、窮屈で適わねえな。特にこの首元……」
そうボヤくと、首を一周回してから一番上のを外した。
コートを肩から取ると、鏡台へ雑に引っ掛ける。
「で、話しとは何だ。突っ立ってねえで、座れ」
自身は胡座をかいて座ると、その前を指さした。桜司郎は促されるままにそこへ腰を降ろす。
どうにも見慣れぬ装いというだけで、まるで別人と話しているような心地になった。それがあまりにも似合っているものだから、余計にである。
落ち着かない気持ちを何とか抑え、口を開いた。
「あの……甲府への出陣の件ですが。あれは決定事項なのでしょうか」
「無論だ。もう支度金も、銃砲も頂戴している」
至極冷静な声色と共に、真意を問うような視線が向けられる。それどころか、触れて欲しくないと言わんばかりに冷たさすら孕んでいた。
だが、桜司郎はここで引き下がる訳にはいかないと言葉を続ける。「副長は何か可笑しいと思いませんでしたか。慶喜公が恭順を決めて謹慎しているというのに、我々が甲府を抑えた暁にはそこへ入って頂くなど……」
それを聞くなり土方は視線を落とした。その仕草に、少なからず思うところがあるのだと分かり、桜司郎は安堵する。
だが──
「それがどうした」
「ど、どうしたって……」
抑揚の無い声にしどろもどろになる。けれども、負けてはならぬと己を奮い立たせた。
「わ……私たちは、言わば騙されているようなものです。
そうして入城を遅らせる魂胆だった。このことが露呈すれば、裏切り者の謗りを受けることは間違いない。だが、このまま黙って隊が壊滅するのを見ていることは出来なかった。
やっと生き生きとしだした桜司郎を見て、榎本は口角を上げる。
「……にしても、https://www.evernote.com/shard/s330/sh/6dff7ffd-6fd8-0b92-9e4c-b5af7b73c766/xeeVuqKtOviXxjS-2RaNpF_gINpjPyV-rxmzsUCqBeRauA9Wpg4O-eNLNw https://blog.udn.com/79ce0388/180113305 https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202311300000/ 俺が聞いていた新撰組とは随分違うなァ。幕府の思惑くらい見抜けそうなモンなんだが」
「それは……。──私もそう思う。あの副長が分からないとは思えない……」
「へえ……、そんなに土方とやらはキレ者なのかえ」
その問いに、桜司郎は力強く頷いた。すると榎本は興味深そうに目を細める。
それから二人は今後について話しを重ねた。どうやら榎本も徹底抗戦派らしい。いずれは共闘する日が来るかもしれなかった。
「……そろそろ帰るよ。有難う、釜。君のお陰で考えが纏まった。副長とも話してみる」
「おうよ。いつでも来てくりゃれィ!」
どこまでも真っ直ぐな明るさに、桜司郎は微笑む。だが榎本へ背を向けた瞬間、みるみる真剣な顔付きとなった。
暮れ行く空の向こうを見つめながら、屯所へと向かう。 その夜、桜司郎は土方の居室の前に立っていた。背後の庭にある池には月が浮かんでいる。淡い光に背中を押されるように、小さく拳を固めると口を開いた。
「副長。……榊です」
そのように言えば、少しの間の後に「入れ」と促される。意を決した表情で戸へ手を掛けた。
開け放った先には、人影が立っている。無論それは土方だが、その装いに目を丸くした。
「こんな夜にどうした」
「話しがあって……。そ、その……ご恰好は?」
髪はいつもの総髪だが、彼が纏っているのは着物ではなく榎本に似た洋装だった。立襟のシャツにベスト、ズボン。腹が締まらぬのが煩わしいのか、その上から帯を巻いていた。そして肩には羽織のようにフロックコートが掛けられている。
スラッとした体躯であるからか、やけに眩しく見えた。
呆然と部屋の前で立ち尽くす桜司郎の腕を、土方は寒いと言って引く。
「着物で洋式の戦いは出来ねえからな。俺ァ、形から入るんだ。……にしたって、窮屈で適わねえな。特にこの首元……」
そうボヤくと、首を一周回してから一番上のを外した。
コートを肩から取ると、鏡台へ雑に引っ掛ける。
「で、話しとは何だ。突っ立ってねえで、座れ」
自身は胡座をかいて座ると、その前を指さした。桜司郎は促されるままにそこへ腰を降ろす。
どうにも見慣れぬ装いというだけで、まるで別人と話しているような心地になった。それがあまりにも似合っているものだから、余計にである。
落ち着かない気持ちを何とか抑え、口を開いた。
「あの……甲府への出陣の件ですが。あれは決定事項なのでしょうか」
「無論だ。もう支度金も、銃砲も頂戴している」
至極冷静な声色と共に、真意を問うような視線が向けられる。それどころか、触れて欲しくないと言わんばかりに冷たさすら孕んでいた。
だが、桜司郎はここで引き下がる訳にはいかないと言葉を続ける。「副長は何か可笑しいと思いませんでしたか。慶喜公が恭順を決めて謹慎しているというのに、我々が甲府を抑えた暁にはそこへ入って頂くなど……」
それを聞くなり土方は視線を落とした。その仕草に、少なからず思うところがあるのだと分かり、桜司郎は安堵する。
だが──
「それがどうした」
「ど、どうしたって……」
抑揚の無い声にしどろもどろになる。けれども、負けてはならぬと己を奮い立たせた。
「わ……私たちは、言わば騙されているようなものです。
Posted by James Bond at
19:58
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2023年12月11日
「……これから下坂するとなれば
「……これから下坂するとなれば、沖田先生はどうなりましょう。先程から外は雨が打ち付けております。行程を耐えられるかどうか…………」
ただでさえ身に滲みるような冬の寒さだ。油小路の一件から寝込みがちの沖田に、雨の中の行軍は難しいだろう。
誰もがそれは厳しいと心の中で思っていた。しかし、あれほど本人が戦場で死ぬことを渇望しているのだ。留守を言い渡すのは残酷だろう。
「…………総司は置いていく。お前さんの言う通り、あれでは耐えられん。俺が言いに行って来る」
だが土方は迷うこと無く言い捨てると立ち上がった。
それに追従する形で、https://johnsmith786.mystrikingly.com/blog/cd88532e455 https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/988514.html https://note.com/carinacyril786/n/n21953e0cf5ce?sub_rt=share_pb 近藤と桜司郎も部屋を後にする。「総司、入るぞ」
土方を筆頭に声を掛け、返事を待たずに部屋へ入る。そこには鎖の着込みを付けた沖田が居た。体格に合わせて仕立てた筈のそれは、頼りないほどに浮いて見える。
随分と痩せたのだと一目で分かった。
「……やあ、お揃いで…………」
少し前までは軽々と着回して飛び回っていたのだが、今は酷く重そうにしている。にこりと笑って立ち上がろうとするが、その顔色は悪く、足取りは覚束無かった。
「総司、何をしている」
「何をって…………、戦に行くのでしょう?その支度ですよ。もそっと早く刀を研ぎに出せば良かったな……」
何処かから聞き付けたのだろう。沖田は当たり前に出陣する気でいた。
刀を取ろうと屈んだ拍子に、畳の縁に足を取られて前のめりにく。
「総司ッ」
その腕を瞬発的に飛び出した近藤が引いた。握った手首の細さに、思わず眉を寄せてしまう。
まるで沖田が内弟子として試衛館に来た時のようなそれだった。貧乏を極めていたせいで、食事すら満足に取れず、筋肉も脂肪も無かった頃のことだ。
「す、すみません。うっかりしていて……」
それを見ていた土方は見えぬところで拳を握る。そして一歩踏み出すと、口を開いた。
「──お前は留守番だ。その身体でこの雨の中を連れて行く訳にはいかない」
戸の外は止むことを知らない雨が激しく打ち付けている。風もあり、それに晒されるだけで体力を奪われることが容易に想像できた。
それが分からぬ沖田では無い。自分の身体のことなのだから、自分が一番知っているのだ。
しかし、
「嫌です。私も着いて行きます……」
小さな声で拒否をする。
「これはただの御用改めどころじゃねえ。戦だ。もしお前さんが倒れたとしても、誰も救い出してやれねえんだ」
それを諌めるように、けれども淡々と土方が言葉を続けた。
「分かっています!……分かっています。誰も守って欲しいなどと思っちゃいません。自分の身は自分で守ります」
「それでも駄目だ。…………隊の士気に関わる」
その言葉に、沖田は一歩後ずさる。
誰よりも病を憎んだのは己だ。それでも仕方ないと、は何かの役に立てると何度も言い聞かせて此処まで来た。
そのが今だというのに、命の使い所さえ選ぶことが出来ない現実が目の前に立ちはだかる。
思わず涙が零れそうになり、視線を下へ落とした。──困らせるな。聞き分けの無いのように駄々をこねて困らせてはいけない。
沖田は己へ言い聞かせると、言いたい言葉を全て腹の奥へ飲み込んだ。そして無理矢理口角を上げてから顔を上げる。
「…………分かり、ました。馬鹿なことを申して済みません。大人しく留守を守ります」
あまりにそれが痛々しくて、土方と桜司郎は視線を落とした。
だが、近藤だけは真っ直ぐに見据える。そして近付くとその頭をポンポンと撫でた。
「総司、この戦は恐らく長期戦だ。必ずやお前の、沖田総司の力が必要になる。だから……焦らずにゆっくり治してから来てくれ」
ただでさえ身に滲みるような冬の寒さだ。油小路の一件から寝込みがちの沖田に、雨の中の行軍は難しいだろう。
誰もがそれは厳しいと心の中で思っていた。しかし、あれほど本人が戦場で死ぬことを渇望しているのだ。留守を言い渡すのは残酷だろう。
「…………総司は置いていく。お前さんの言う通り、あれでは耐えられん。俺が言いに行って来る」
だが土方は迷うこと無く言い捨てると立ち上がった。
それに追従する形で、https://johnsmith786.mystrikingly.com/blog/cd88532e455 https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/988514.html https://note.com/carinacyril786/n/n21953e0cf5ce?sub_rt=share_pb 近藤と桜司郎も部屋を後にする。「総司、入るぞ」
土方を筆頭に声を掛け、返事を待たずに部屋へ入る。そこには鎖の着込みを付けた沖田が居た。体格に合わせて仕立てた筈のそれは、頼りないほどに浮いて見える。
随分と痩せたのだと一目で分かった。
「……やあ、お揃いで…………」
少し前までは軽々と着回して飛び回っていたのだが、今は酷く重そうにしている。にこりと笑って立ち上がろうとするが、その顔色は悪く、足取りは覚束無かった。
「総司、何をしている」
「何をって…………、戦に行くのでしょう?その支度ですよ。もそっと早く刀を研ぎに出せば良かったな……」
何処かから聞き付けたのだろう。沖田は当たり前に出陣する気でいた。
刀を取ろうと屈んだ拍子に、畳の縁に足を取られて前のめりにく。
「総司ッ」
その腕を瞬発的に飛び出した近藤が引いた。握った手首の細さに、思わず眉を寄せてしまう。
まるで沖田が内弟子として試衛館に来た時のようなそれだった。貧乏を極めていたせいで、食事すら満足に取れず、筋肉も脂肪も無かった頃のことだ。
「す、すみません。うっかりしていて……」
それを見ていた土方は見えぬところで拳を握る。そして一歩踏み出すと、口を開いた。
「──お前は留守番だ。その身体でこの雨の中を連れて行く訳にはいかない」
戸の外は止むことを知らない雨が激しく打ち付けている。風もあり、それに晒されるだけで体力を奪われることが容易に想像できた。
それが分からぬ沖田では無い。自分の身体のことなのだから、自分が一番知っているのだ。
しかし、
「嫌です。私も着いて行きます……」
小さな声で拒否をする。
「これはただの御用改めどころじゃねえ。戦だ。もしお前さんが倒れたとしても、誰も救い出してやれねえんだ」
それを諌めるように、けれども淡々と土方が言葉を続けた。
「分かっています!……分かっています。誰も守って欲しいなどと思っちゃいません。自分の身は自分で守ります」
「それでも駄目だ。…………隊の士気に関わる」
その言葉に、沖田は一歩後ずさる。
誰よりも病を憎んだのは己だ。それでも仕方ないと、は何かの役に立てると何度も言い聞かせて此処まで来た。
そのが今だというのに、命の使い所さえ選ぶことが出来ない現実が目の前に立ちはだかる。
思わず涙が零れそうになり、視線を下へ落とした。──困らせるな。聞き分けの無いのように駄々をこねて困らせてはいけない。
沖田は己へ言い聞かせると、言いたい言葉を全て腹の奥へ飲み込んだ。そして無理矢理口角を上げてから顔を上げる。
「…………分かり、ました。馬鹿なことを申して済みません。大人しく留守を守ります」
あまりにそれが痛々しくて、土方と桜司郎は視線を落とした。
だが、近藤だけは真っ直ぐに見据える。そして近付くとその頭をポンポンと撫でた。
「総司、この戦は恐らく長期戦だ。必ずやお前の、沖田総司の力が必要になる。だから……焦らずにゆっくり治してから来てくれ」
Posted by James Bond at
21:50
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