2024年08月21日
「褒めているのはいつも私の方にございます
「褒めているのはいつも私の方にございます。殿はお美しい、眉目秀麗だと」
「ま、それも致し方あるまい。何せ儂は、織田家の男たちの中で一番の美丈夫じゃからな」
「まあ、呆れたこと」
弾けたような夫婦の笑い声が、部屋の中いっぱいに響いた。
夫婦の様子を間近で眺めている三保野の面差しにも、暖かな微笑が浮かぶ。
──姫様がおられて、殿がおられて、その間には吾子様がおられる…。嗚呼、何と麗しい家族の姿なのでございましょう。
した濃姫に知って欲しかったのは、まさにこのような幸福の時間なのだと、三保野は独り悦に入っていた。
「…そうそう、忘れるところであった。お濃。悪いが儂は、一足先に岐阜の城へ帰らせてもらうことになったぞ」
「ま、岐阜へでございますか?」
「ああ。義昭様の将軍宣下の大礼が済んだら直ちにな。政務も山積しておるし、儂の留守を狙い、敵方が岐阜に乗り込ん来るとも限らぬ故」
「……」
濃姫は三保野と軽く目を見合わせ、そして信長の腕の中にいる姫を、しんみりとした面持ちで眺めた。
憮然となる妻を見て、信長はその心中を察したように小さく首肯する。https://www.storeboard.com/blogs/consumer-advice/the-silver-lining-with-any/5853994 https://dochub.com/m/shared-document/carinadarling1/jo3xELpR3AazrbJVJBa7nr/world-docx?dt=Zzzb_FKyZa9EeJhhYpdy https://www.gamerlaunch.com/community/users/blog/6105827/2298454/you-better-believe-that-/?gid=535
「分かっておる。そなたも姫と共に、早よう岐阜の城に帰りたいのであろう」
「…殿…」
「じゃがな、もう暫く、そちと姫には京に留まってもらいたいのじゃ。出来るなら──そうじゃな、来年の春までは」
「春…、そのような先まで!?」
「申し訳ないとは思うのじゃがな。どうかそうしてくれぬか」
「でございますか? 何故にそうも長く?」
濃姫が困惑気味に訊ねると
「あちらの城で、やらなければならぬことがあるのじゃ」
義昭の時と同じように返答した。
「殿、それはいったい」
その訳を濃姫が訊きかけると、信長はすかさず口を挟んだ。
「時に濃。岐阜の城にあるの御殿、そこにあるそなたの御座所のことで、一つ相談があるのじゃがな」
「…麓の御殿がなされたのです?」
「あの御殿の、そなたの座所の裏手に大きな造り池をえてやっていたであろう?」
「はい。那古屋や清洲の城にあった水辺によう似ていて、私も大好きでございました。山頂の御殿に移ってからは、あまり訪れる機会もございませんでしたが」
「元々麓の御殿は公邸として設え直したものじゃからな。建物をあまり衰えさせぬようにと、
普段は清掃の者共以外は立ち入りを禁じておったのじゃが……ここに来てそれが、思いがけず功を奏したようじゃ」
「 ? 」
「お濃。悪いがあの造り池、埋め立てても良いであろうか?」
思いがけぬ話に、濃姫はわっと目を見張った。
「埋める!? あの池をでございますか!?」
「ああ。許してくれるか?」
「さ、されど、あのように美しい池を埋め立てるなんて…」
「では、それが全て、我らの子を守る為じゃと申したら、許してくれるか?」
「……姫の為?」
信長は無言で首を前に振ると、その細面に不敵な笑みを浮かべた。
濃姫はそんな夫の考えが今一読めず、小首を傾げるばかりであった。
「従四位下、参議、左近衛権中将・源朝臣義昭──をるに、の人、宜しく征夷大将軍に為すべしー!」
それから同年の十月二十二日(十八日とも)。
正式の服装でへ参内した義昭は、そこで将軍宣下の大礼を受け、念願であった室町幕府十五代将軍の座に就任した。
世間的には義昭の供奉者という認識であった信長だったが、織田家の家臣たちは皆 意気揚々として
「これぞ我が国に並ぶ者のない名誉じゃ」
「ま、それも致し方あるまい。何せ儂は、織田家の男たちの中で一番の美丈夫じゃからな」
「まあ、呆れたこと」
弾けたような夫婦の笑い声が、部屋の中いっぱいに響いた。
夫婦の様子を間近で眺めている三保野の面差しにも、暖かな微笑が浮かぶ。
──姫様がおられて、殿がおられて、その間には吾子様がおられる…。嗚呼、何と麗しい家族の姿なのでございましょう。
した濃姫に知って欲しかったのは、まさにこのような幸福の時間なのだと、三保野は独り悦に入っていた。
「…そうそう、忘れるところであった。お濃。悪いが儂は、一足先に岐阜の城へ帰らせてもらうことになったぞ」
「ま、岐阜へでございますか?」
「ああ。義昭様の将軍宣下の大礼が済んだら直ちにな。政務も山積しておるし、儂の留守を狙い、敵方が岐阜に乗り込ん来るとも限らぬ故」
「……」
濃姫は三保野と軽く目を見合わせ、そして信長の腕の中にいる姫を、しんみりとした面持ちで眺めた。
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「…殿…」
「じゃがな、もう暫く、そちと姫には京に留まってもらいたいのじゃ。出来るなら──そうじゃな、来年の春までは」
「春…、そのような先まで!?」
「申し訳ないとは思うのじゃがな。どうかそうしてくれぬか」
「でございますか? 何故にそうも長く?」
濃姫が困惑気味に訊ねると
「あちらの城で、やらなければならぬことがあるのじゃ」
義昭の時と同じように返答した。
「殿、それはいったい」
その訳を濃姫が訊きかけると、信長はすかさず口を挟んだ。
「時に濃。岐阜の城にあるの御殿、そこにあるそなたの御座所のことで、一つ相談があるのじゃがな」
「…麓の御殿がなされたのです?」
「あの御殿の、そなたの座所の裏手に大きな造り池をえてやっていたであろう?」
「はい。那古屋や清洲の城にあった水辺によう似ていて、私も大好きでございました。山頂の御殿に移ってからは、あまり訪れる機会もございませんでしたが」
「元々麓の御殿は公邸として設え直したものじゃからな。建物をあまり衰えさせぬようにと、
普段は清掃の者共以外は立ち入りを禁じておったのじゃが……ここに来てそれが、思いがけず功を奏したようじゃ」
「 ? 」
「お濃。悪いがあの造り池、埋め立てても良いであろうか?」
思いがけぬ話に、濃姫はわっと目を見張った。
「埋める!? あの池をでございますか!?」
「ああ。許してくれるか?」
「さ、されど、あのように美しい池を埋め立てるなんて…」
「では、それが全て、我らの子を守る為じゃと申したら、許してくれるか?」
「……姫の為?」
信長は無言で首を前に振ると、その細面に不敵な笑みを浮かべた。
濃姫はそんな夫の考えが今一読めず、小首を傾げるばかりであった。
「従四位下、参議、左近衛権中将・源朝臣義昭──をるに、の人、宜しく征夷大将軍に為すべしー!」
それから同年の十月二十二日(十八日とも)。
正式の服装でへ参内した義昭は、そこで将軍宣下の大礼を受け、念願であった室町幕府十五代将軍の座に就任した。
世間的には義昭の供奉者という認識であった信長だったが、織田家の家臣たちは皆 意気揚々として
「これぞ我が国に並ぶ者のない名誉じゃ」
Posted by James Bond at 21:13│Comments(0)