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2024年08月21日

「褒めているのはいつも私の方にございます

「褒めているのはいつも私の方にございます。殿はお美しい、眉目秀麗だと」

「ま、それも致し方あるまい。何せ儂は、織田家の男たちの中で一番の美丈夫じゃからな」

「まあ、呆れたこと」

弾けたような夫婦の笑い声が、部屋の中いっぱいに響いた。

夫婦の様子を間近で眺めている三保野の面差しにも、暖かな微笑が浮かぶ。


──姫様がおられて、殿がおられて、その間には吾子様がおられる…。嗚呼、何と麗しい家族の姿なのでございましょう。


した濃姫に知って欲しかったのは、まさにこのような幸福の時間なのだと、三保野は独り悦に入っていた。


「…そうそう、忘れるところであった。お濃。悪いが儂は、一足先に岐阜の城へ帰らせてもらうことになったぞ」

「ま、岐阜へでございますか?」

「ああ。義昭様の将軍宣下の大礼が済んだら直ちにな。政務も山積しておるし、儂の留守を狙い、敵方が岐阜に乗り込ん来るとも限らぬ故」

「……」

濃姫は三保野と軽く目を見合わせ、そして信長の腕の中にいる姫を、しんみりとした面持ちで眺めた。

憮然となる妻を見て、信長はその心中を察したように小さく首肯する。https://www.storeboard.com/blogs/consumer-advice/the-silver-lining-with-any/5853994 https://dochub.com/m/shared-document/carinadarling1/jo3xELpR3AazrbJVJBa7nr/world-docx?dt=Zzzb_FKyZa9EeJhhYpdy https://www.gamerlaunch.com/community/users/blog/6105827/2298454/you-better-believe-that-/?gid=535

「分かっておる。そなたも姫と共に、早よう岐阜の城に帰りたいのであろう」

「…殿…」
「じゃがな、もう暫く、そちと姫には京に留まってもらいたいのじゃ。出来るなら──そうじゃな、来年の春までは」

「春…、そのような先まで!?」

「申し訳ないとは思うのじゃがな。どうかそうしてくれぬか」

「でございますか? 何故にそうも長く?」

濃姫が困惑気味に訊ねると

「あちらの城で、やらなければならぬことがあるのじゃ」

義昭の時と同じように返答した。

「殿、それはいったい」

その訳を濃姫が訊きかけると、信長はすかさず口を挟んだ。

「時に濃。岐阜の城にあるの御殿、そこにあるそなたの御座所のことで、一つ相談があるのじゃがな」

「…麓の御殿がなされたのです?」

「あの御殿の、そなたの座所の裏手に大きな造り池をえてやっていたであろう?」

「はい。那古屋や清洲の城にあった水辺によう似ていて、私も大好きでございました。山頂の御殿に移ってからは、あまり訪れる機会もございませんでしたが」

「元々麓の御殿は公邸として設え直したものじゃからな。建物をあまり衰えさせぬようにと、

普段は清掃の者共以外は立ち入りを禁じておったのじゃが……ここに来てそれが、思いがけず功を奏したようじゃ」

「 ? 」

「お濃。悪いがあの造り池、埋め立てても良いであろうか?」

思いがけぬ話に、濃姫はわっと目を見張った。

「埋める!? あの池をでございますか!?」
「ああ。許してくれるか?」

「さ、されど、あのように美しい池を埋め立てるなんて…」

「では、それが全て、我らの子を守る為じゃと申したら、許してくれるか?」

「……姫の為?」

信長は無言で首を前に振ると、その細面に不敵な笑みを浮かべた。

濃姫はそんな夫の考えが今一読めず、小首を傾げるばかりであった。






「従四位下、参議、左近衛権中将・源朝臣義昭──をるに、の人、宜しく征夷大将軍に為すべしー!」

それから同年の十月二十二日(十八日とも)。

正式の服装でへ参内した義昭は、そこで将軍宣下の大礼を受け、念願であった室町幕府十五代将軍の座に就任した。

世間的には義昭の供奉者という認識であった信長だったが、織田家の家臣たちは皆 意気揚々として

「これぞ我が国に並ぶ者のない名誉じゃ」
  


Posted by James Bond at 21:13Comments(0)

2024年08月19日

今、殿との間に土岐氏の血を受け

今、殿との間に土岐氏の血を受け継ぐ若君が産まれたら、彼らは奇妙殿をに追い込んででもお世継ぎにと…、

いいえ、最悪の場合は、その御子の血筋を盾に、殿を亡き者にしようと企むやも知れませぬ」

現に道三は、自身を土岐氏の子と信じてやまなかった義龍に “ 実父の仇討ち ” として長良川で討たれている。

この折 土岐氏の遺臣たちが、挙って義龍を支持していたのは言うまでもない。

「じゃから、懐妊を公にはせぬと言うのか? 万が一の折の争いを避ける為に」

「……それもありまする」

「ならば、他にも理由があるのか?」
信長の問いかけに、濃姫は静かに頷くと

「ご嫡男である奇妙殿のお立場を、お守りする為にございます」 https://addgoodsites.com/details.php?id=567090 https://cutismedi.com.hk/ https://penzu.com/p/525d212567dce57b

やおら、母親の顔になって告げた。

「先ほど申し述べたことは、全て私の勝手な懸念に過ぎませぬ。 …なれど、私が若君を産めば、

多かれ少なかれ跡目問題に異論を唱える者も出て参りましょう。私は、それが不安で堪らないのでございます」

妻の心中をってか、信長も「うむ…」と同調するように首肯した。

「奇妙殿は我が子同然にございます。あの子の平穏と安寧を願うからこそ、私もとなる決意を致したのです。

…それ故、もしも再び懐妊に至り、若君が産まれるようなことがあったとしても、お世継ぎにはせぬと心に決めておりました。

そのような大それた立場などなくとも、殿のお血を引く健勝な御子を産むことが出来れば、それでだけで本望だと」

「…お濃…」

その気高い志を聞き、信長はまるで菩薩を眺めるかのような眼差しで姫を見つめた。

すると濃姫は、どこか寂しさの漂う微笑を満面に浮かべると

「されど……綺麗事も、他人を慮る心も抜きにして申し上げますと、私はきっと……怖かったのだと思います」

やや震えを帯びる声で信長に告げた。

「怖い?」

「…ご承知の通り、私は一度 御子を失うておりまする。侍女たちはその原因を、清洲の城に忍び入った盗人とした折に、

強く突き飛ばされた故だと申しまするが、私の身体の問題が大きく影響していたことは、よもや言うまでもありませぬ」

「──」

「治したくとも、決して治せぬ病。せっかく御子を授かっても、また流れてしまうのではないかと考えると……怖うて怖うて、仕方がないのでございます…」

黒い瞳を涙で潤ませながら、濃姫は悲痛な面持ちでれた。

「もしも、懐妊を公にし、皆に祝うてもらったとしても……無事に産めず……失望させてしまったらと思うと…」

今にもが漏れそうになる口元を、濃姫は咄嗟に手で押さえた。
信長は暫し、居たたまれないような思いで妻の姿を見つめていたが

「…馬鹿なことをっ」

と苦し気に吐き捨てるなり、濃姫の華奢な身を引き寄せ、強く抱き締めた。

「何故そなたは、そのように余計な心配ばかりをするじゃ! 腹の中の子が男か女かも分からぬと申すのに、

儂が討たれる!? 奇妙が廃嫡に追い込まれるやも知れぬじゃと!? けたことばかりを申すな!」

「……」

「そなたが今せねばならぬことは、安静に尽くし、腹の中の子に大事がないよう、その身を守ることじゃ!

起きるか起きぬかも分からぬ事態に、そなたが心を痛める必要などにもない!

万に一つ左様な事態が起こったとしても、その対処を考えるのは儂の役目じゃ。そなたではない」

姫の背中に回した信長の手に、更にも増して力がこもる。

「怖かろう…、不安でもあろう…。されど今は、かつてのような不幸を繰り返さぬ為にも、この腹の子を守り抜くことだけを考えよ」
  


Posted by James Bond at 21:32Comments(0)

2023年12月24日

為三郎は十二,三歳といった

為三郎は十二,三歳といったところだろうか。
その年齢で父親を悪く言われるのは辛いことだろう。
分かりたくなくても嫌みの意味を理解出来てしまう。


三津だってここに来るだけで功助とトキが陰口を叩かれたり,嫌がらせを受けるのは耐えられない。
為三郎の気持ちは理解出来るつもりだ。


『それでも八木さん家に行かれへんのはこっちの事情やし申し訳ないなぁ…。』


いわゆる大人の都合ってやつだ。
悪い気がしていた三津はふと昨日の事を思い出した。


「そうや為三郎はんがこっち来たら?https://highforum.net/call-and-put-another-trading-4-strategies-for-long-term-investors-to-purchase-and-vend/ https://highforum.net/trade-stocks-commission-free-fxtm-global-online-trading/ https://newbacklink.com/call-and-put-other-trading-4-strategies-for-long-term-investors-to-buy-and-vend/
お梅さんは勝手口に来てはったで?」


お梅が来たのだから為三郎だって来てもいいじゃないか。
それに折角会えたのにこれっきりじゃ寂しすぎる。


三津が提案すると,それもそうかと納得したのか為三郎はやっと笑顔を見せて今度前川邸に会いに行くと約束した。









その頃,三津と入れ違いに道場にあの男が姿を現した。


「朝から稽古に励んでご苦労ですな。近藤さん。」


自慢の鉄扇で扇ぎながら道場に踏み込む恰幅の良い男。


『来やがったな。この野郎。』


土方の目が鋭く光る。
この男が稽古をしに来るはずがない。
間違いなく別の目的がある。


「何やら新しい女中を雇ったらしいがまだ挨拶に来ておらん。」


筆頭局長の自分に挨拶なしとはどういう了見か。
その女はどこにいる?と探す素振りを見せた。


「これはこれは筆頭局長ともあろうお方が,わざわざ女中ごときの為に足を運ばれるとは。」


くどいぐらいに嫌みったらしい言い方で土方は近藤と芹沢の間に割って入る。


芹沢が三津に目をつけた。
それには総司も気が気でなく,静かに土方の出方を見守る。


「生憎その新入りは礼儀はなってない,仕事も遅い。とても芹沢局長に会わせられる奴じゃないもんで。
お恥ずかしい話,拾って来たのはこの自分。しっかり躾てからそちらに出向きましょう。」


土方の言葉に眉を顰め言葉を返そうとしたが,


「わざわざ道場にいらしたんです。共に稽古に励みませんか?」


土方は芹沢に喋る隙を与えず,稽古に誘った。
竹刀を肩に担ぎ,口角を上げて笑う。


『簡単に会えると思うなよ?』


笑顔の裏で毒づいて早く帰れと念を送る。
芹沢は三津に会えないなら用はないと踵を返した。


芹沢が引き上げて総司はほっと息を吐くが,三津の悪口を並べた土方を無性に殴りたくなった。「褒め言葉はなかなか口にしないのに悪口は止めどなく出て来るものですね。」


お見事ですと目が据わった笑顔で総司が手を叩いた。


「まだ出るぜ?」


聞かせてやろうかと得意げに胸を張る。


『今頃三津はくしゃみを連発してるだろうよ。』


その姿を想像して喉を鳴らして笑った。









問題の中心に居ると言うのにまだ何も分かっていないのは本人だけ。


三津は為三郎と遊ぶ約束をして足取り軽く,箒を引きずりながら前川邸に戻った。


門の前では巡察に向かう隊士たちが整列していた。


「今から巡察ですか?お気をつけて!」


隊を率いている原田と永倉を見つけて駆け寄った。


「この笑顔に見送られちゃあ死ぬわけにはいかねぇな。
お三津,俺の無事を祈って待っててくれ。」


原田は人懐っこい笑みで寄って来た三津の両手を包み込んでぐっと顔を寄せた。


三津は顔の近さを気にする事なく“はい”と返事をした。
  


Posted by James Bond at 17:10Comments(0)

2023年12月13日

そして上石原の次には

そして上石原の次には、土方の故郷である日野宿があった。それぞれに立ち寄らせれば、行軍の速度は遅らせられる。

 そうして入城を遅らせる魂胆だった。このことが露呈すれば、裏切り者の謗りを受けることは間違いない。だが、このまま黙って隊が壊滅するのを見ていることは出来なかった。


 やっと生き生きとしだした桜司郎を見て、榎本は口角を上げる。


「……にしても、https://www.evernote.com/shard/s330/sh/6dff7ffd-6fd8-0b92-9e4c-b5af7b73c766/xeeVuqKtOviXxjS-2RaNpF_gINpjPyV-rxmzsUCqBeRauA9Wpg4O-eNLNw https://blog.udn.com/79ce0388/180113305 https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202311300000/ 俺が聞いていた新撰組とは随分違うなァ。幕府の思惑くらい見抜けそうなモンなんだが」

「それは……。──私もそう思う。あの副長が分からないとは思えない……」

「へえ……、そんなに土方とやらはキレ者なのかえ」


 その問いに、桜司郎は力強く頷いた。すると榎本は興味深そうに目を細める。


 それから二人は今後について話しを重ねた。どうやら榎本も徹底抗戦派らしい。いずれは共闘する日が来るかもしれなかった。



「……そろそろ帰るよ。有難う、釜。君のお陰で考えが纏まった。副長とも話してみる」

「おうよ。いつでも来てくりゃれィ!」


 どこまでも真っ直ぐな明るさに、桜司郎は微笑む。だが榎本へ背を向けた瞬間、みるみる真剣な顔付きとなった。

 暮れ行く空の向こうを見つめながら、屯所へと向かう。 その夜、桜司郎は土方の居室の前に立っていた。背後の庭にある池には月が浮かんでいる。淡い光に背中を押されるように、小さく拳を固めると口を開いた。


「副長。……榊です」


 そのように言えば、少しの間の後に「入れ」と促される。意を決した表情で戸へ手を掛けた。

 開け放った先には、人影が立っている。無論それは土方だが、その装いに目を丸くした。


「こんな夜にどうした」

「話しがあって……。そ、その……ご恰好は?」


 髪はいつもの総髪だが、彼が纏っているのは着物ではなく榎本に似た洋装だった。立襟のシャツにベスト、ズボン。腹が締まらぬのが煩わしいのか、その上から帯を巻いていた。そして肩には羽織のようにフロックコートが掛けられている。

 スラッとした体躯であるからか、やけに眩しく見えた。


 呆然と部屋の前で立ち尽くす桜司郎の腕を、土方は寒いと言って引く。


「着物で洋式の戦いは出来ねえからな。俺ァ、形から入るんだ。……にしたって、窮屈で適わねえな。特にこの首元……」


 そうボヤくと、首を一周回してから一番上のを外した。

 コートを肩から取ると、鏡台へ雑に引っ掛ける。


「で、話しとは何だ。突っ立ってねえで、座れ」


 自身は胡座をかいて座ると、その前を指さした。桜司郎は促されるままにそこへ腰を降ろす。

 どうにも見慣れぬ装いというだけで、まるで別人と話しているような心地になった。それがあまりにも似合っているものだから、余計にである。


 落ち着かない気持ちを何とか抑え、口を開いた。


「あの……甲府への出陣の件ですが。あれは決定事項なのでしょうか」

「無論だ。もう支度金も、銃砲も頂戴している」


 至極冷静な声色と共に、真意を問うような視線が向けられる。それどころか、触れて欲しくないと言わんばかりに冷たさすら孕んでいた。

 だが、桜司郎はここで引き下がる訳にはいかないと言葉を続ける。「副長は何か可笑しいと思いませんでしたか。慶喜公が恭順を決めて謹慎しているというのに、我々が甲府を抑えた暁にはそこへ入って頂くなど……」


 それを聞くなり土方は視線を落とした。その仕草に、少なからず思うところがあるのだと分かり、桜司郎は安堵する。


 だが──


「それがどうした」

「ど、どうしたって……」


 抑揚の無い声にしどろもどろになる。けれども、負けてはならぬと己を奮い立たせた。


「わ……私たちは、言わば騙されているようなものです。
  


Posted by James Bond at 19:58Comments(0)

2023年12月11日

「……これから下坂するとなれば

「……これから下坂するとなれば、沖田先生はどうなりましょう。先程から外は雨が打ち付けております。行程を耐えられるかどうか…………」


 ただでさえ身に滲みるような冬の寒さだ。油小路の一件から寝込みがちの沖田に、雨の中の行軍は難しいだろう。

 誰もがそれは厳しいと心の中で思っていた。しかし、あれほど本人が戦場で死ぬことを渇望しているのだ。留守を言い渡すのは残酷だろう。


「…………総司は置いていく。お前さんの言う通り、あれでは耐えられん。俺が言いに行って来る」


 だが土方は迷うこと無く言い捨てると立ち上がった。


 それに追従する形で、https://johnsmith786.mystrikingly.com/blog/cd88532e455 https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/988514.html https://note.com/carinacyril786/n/n21953e0cf5ce?sub_rt=share_pb 近藤と桜司郎も部屋を後にする。「総司、入るぞ」


 土方を筆頭に声を掛け、返事を待たずに部屋へ入る。そこには鎖の着込みを付けた沖田が居た。体格に合わせて仕立てた筈のそれは、頼りないほどに浮いて見える。

 随分と痩せたのだと一目で分かった。


「……やあ、お揃いで…………」


 少し前までは軽々と着回して飛び回っていたのだが、今は酷く重そうにしている。にこりと笑って立ち上がろうとするが、その顔色は悪く、足取りは覚束無かった。


「総司、何をしている」

「何をって…………、戦に行くのでしょう?その支度ですよ。もそっと早く刀を研ぎに出せば良かったな……」


 何処かから聞き付けたのだろう。沖田は当たり前に出陣する気でいた。

 刀を取ろうと屈んだ拍子に、畳の縁に足を取られて前のめりにく。


「総司ッ」


 その腕を瞬発的に飛び出した近藤が引いた。握った手首の細さに、思わず眉を寄せてしまう。

 まるで沖田が内弟子として試衛館に来た時のようなそれだった。貧乏を極めていたせいで、食事すら満足に取れず、筋肉も脂肪も無かった頃のことだ。


「す、すみません。うっかりしていて……」


 それを見ていた土方は見えぬところで拳を握る。そして一歩踏み出すと、口を開いた。


「──お前は留守番だ。その身体でこの雨の中を連れて行く訳にはいかない」


 戸の外は止むことを知らない雨が激しく打ち付けている。風もあり、それに晒されるだけで体力を奪われることが容易に想像できた。

 それが分からぬ沖田では無い。自分の身体のことなのだから、自分が一番知っているのだ。


 しかし、


「嫌です。私も着いて行きます……」


 小さな声で拒否をする。


「これはただの御用改めどころじゃねえ。戦だ。もしお前さんが倒れたとしても、誰も救い出してやれねえんだ」

 それを諌めるように、けれども淡々と土方が言葉を続けた。

「分かっています!……分かっています。誰も守って欲しいなどと思っちゃいません。自分の身は自分で守ります」

「それでも駄目だ。…………隊の士気に関わる」



 その言葉に、沖田は一歩後ずさる。


 誰よりも病を憎んだのは己だ。それでも仕方ないと、は何かの役に立てると何度も言い聞かせて此処まで来た。

 そのが今だというのに、命の使い所さえ選ぶことが出来ない現実が目の前に立ちはだかる。


 思わず涙が零れそうになり、視線を下へ落とした。──困らせるな。聞き分けの無いのように駄々をこねて困らせてはいけない。


 沖田は己へ言い聞かせると、言いたい言葉を全て腹の奥へ飲み込んだ。そして無理矢理口角を上げてから顔を上げる。


「…………分かり、ました。馬鹿なことを申して済みません。大人しく留守を守ります」


 あまりにそれが痛々しくて、土方と桜司郎は視線を落とした。

 だが、近藤だけは真っ直ぐに見据える。そして近付くとその頭をポンポンと撫でた。


「総司、この戦は恐らく長期戦だ。必ずやお前の、沖田総司の力が必要になる。だから……焦らずにゆっくり治してから来てくれ」
  


Posted by James Bond at 21:50Comments(0)

2023年10月22日

にも、笑みまではいかず

にも、笑みまではいかずともずいぶんとやさしく穏やかながでているようにうかがえる。

 双方ともに愉しんでいる。

 そういうだと理解することにしよう。

 それにしても、あれだけ動きまわり斬り結んでいるのに、息一つ乱していない。
 真剣で斬り結びつづけることじたい、どれだけ集中力がいることか。

 ミクロ以下の油断や隙が、大怪我につながる可能性がある。

 いや。大怪我どころか、https://besidethepoint.mystrikingly.com/blog/9aa79a8c917 https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202310210010/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/1c45d778d8e735400d7e3c0fe533140c すら失いかねない。

 ってやはり、二人は探り合いやよみ合いをしているわけではなさそうだ。
 息一つ乱していないので、呼吸を整えているというわけでもなさそうだ。

 もしかすると、勝負そのものをすこしでも長く愉しもうとしているのだろうか。

 一分一秒でも長く、勝負をしつづけたいのだろうか。

 俊冬のいった『最後の勝負』が、いった本人といわれた俊春とを縛りつけているのだろうか。

 これが誠に『最後の勝負』になるのであれば、すこしでも勝負を長引かせるせたいと願い、実際そうするかもしれない。

 そうこうしているうちに、第二ラウンドがはじまった。

 二人の超神速の剣の応酬を眺めていると、背伸びして見極めようという気がなくなってきた。

 みえぬものはみえぬ。仕方がない。

 そう結論付けるとふっきれた。

 俊冬は、時間が経つにつれてヨユーがなくなってきたようだ。副長似のイケメンから笑みがなくなり、かわって必死さが浮かびはじめた。

 その一方で、俊春はどんどんテンションがあがっていっているらしい。

 かっこかわいいは、萌えそうなくらいかわいい笑顔になっている。

 ということは、そろそろフィナーレをむかえようとしているのか。

 親父よ、みているか?

 親父の二人の息子は、こんなにもすごいぞ。

 晴れ渡った蝦夷の空を見上げ、空にいるであろう親父に呼びかけてしまった。

 親父だけではない。近藤局長だってみているはずだ。

 って空から眼前へとを戻したタイミングで、『カチンッ』と金属がぶつかり合う甲高い音が響いた。

 どちらかの刀が、さっきまで見上げていた空へと上昇してゆく。
 いやにゆっくりと上がっていったかと思うと、今度は引力に任せて落下してきた。

 その瞬間、俊春がジャンプをした。砂地をものともせず、膝の屈伸だけで飛び上がったのである。

 それから、空中で刀の柄をキャッチしてストンと砂地におりた。
は、左手首を右掌でおさえている俊冬に「関の孫六」の柄頭を差しだした。

「ぼくの勝ちだね」
「ああ、おまえの勝ちだ」

 俊冬は、刀を受けとりながら俊春の勝ちを認めた。

 長いようで短い勝負はおわった。

 最強対最強の対決は、俊春が制した。 いっせいに歓声があがった。

 だれもが讃えている。それは、勝者である俊春にたいしてだけではない。

 健闘を繰り広げた両者を讃えているのである。

 その歓声は、しばらくの間やむことはなかった。

 優勝者である俊春に、榎本からプレゼントが贈られることとなった。

『なんでも好きなものを』

 急遽おこなった剣術大会だから、当然優勝のトロフィーとか盾とか賞状とかを準備しているわけではない。
 贈呈品も同様である、

 榎本は、かんがえるのが面倒くさかったにちがいない。

「なんでもくれてやるから、望みをいえ」

 ゆえに、そんな感じになったのであろう。

 神や仏を超越している俊春は、あらゆる欲とむえんである。
 金や女や酒や喰い物、家とか土地とか金銀宝石とか美術品とか、そういう物理的な望みはもっていないらしい。

 もちろん、地位や名誉みたいなものも。

 さらには愛、みたいな背筋の凍るような望みも。

「全将兵、関係者に一日でもいいから自由時間を」

 やはり、俊春は神や仏を超越している慈悲深さをもっている。

 そんな驚くべき望みを、榎本に伝えたのである。

 これには、さすがの榎本も感心しきりである。

「各隊、各部門で調整し、早急に交代で休みをとるよう」

 そして、そんな望みをソッコーで了承してくれる榎本も、さすがである。

 その場で「公休取得」の宣言してくれた。

 これには、全員がよろこんだことはいうまでもない。

 俊春の株は上がりまくりである。

 それだけではない。

 かれは、その望みは自分のものだけではなく、「土方陸軍奉行並と相談して」と付け加えたのである。

 またしても、副長は棚から牡丹餅的に株をあげることができた。

 この株は、チートな戦術で勝ち上がるという不評をもふっ飛ばすほどの優良株であった。

 だれもが、副長と俊春に感謝した。
  


Posted by James Bond at 20:05Comments(0)

2023年09月28日

副長は日向とのトラブ

 副長は日向とのトラブルについて、白虎隊の隊士たちに告げるか告げぬか、告げるとすればどう告げるかを相談しにきたらしい。

 たしかに、俊春のいうとおりである。

 日向はムダにプライドが高そうだ。みずから「こんなことがあってひどい目にあった」などと、自分の部下に告げるはずはない。

「そうだな、ぽち」

 副長は一つうなずき、同意した。

「いま一つのご用件は……」

 俊春はかっこかわいいを、久吉と沢の方へと向けた。

「久吉殿、沢殿。みなさんで丹精こめてつくった料理でございます。https://keizo.anime-navi.net/Entry/56/ https://alicia034b.blogger.ba/2023/05/02/%e3%81%b8%e5%90%91%e3%81%8b%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%84%e3%82%8b%e3%81%ae%e3%81%a7%e3%81%af%ef%bc%9f%e3%80%8d/ http://kotone22.blogaholic.se/2023/apr/171084/217671236412431123941243112394123923866312360/ にて立ったまま食するより、部屋で座ってゆっくりお召し上がりください」

 俊春は軽く頭をさげ、二人にすすめる。

 なるほど。副長は、久吉と沢にいっしょに喰うよう誘いにきたわけか。

 久吉と沢は、たがいにを見合わせた。恐縮しているのが、表情でわかる。
 かれらが遠慮するかと思ったが、副長がみずから誘いにきたということもある。

「それでは、お言葉に甘えまして」

 沢がいい、二人は頭をさげつつ了承してくれた。

「主計、おぬしも戻って喰ってくれ。手伝ってくれて礼を申す。おぬしの献立は、此度も大当たりだな」
「ぽち、あなたの腕がいいからですよ。これでたまがもどってきたら、はうまい物を喰いすぎて、健康状態をつねに心配しなければならないでしょうね」

 そう返すと、俊春は苦笑した。

 俊冬は、どうしているだろう。ちゃんと戻ってきてくれるのか?
 ある意味人質というわけではないが、俊春がにいるかぎり、俊冬はもどってきてくれると信じたい。

 そのとき、俊冬と板橋の刑場で別れる際、かれがおれにいいかけたことがあったことを思いだした。厳密には、おれになにかいったが、喧噪でなにをいったのかききとれなかったのである。

 かれはおれに、なにをいったのだろうか。

 たしか、「ありがとう」だった。そこまではきこえた。そのあと、「は」ときこえたような気がする。そのあとがきこえなかった。

「主計」

 呼ばれてはっとした。俊春が、懐を脅かすぎりぎりのところでじっとみつめている。みえるほうのも、おれをひたとみすえている。

「主計、案ずるな。気まぐれにゃんこは、おぬしのことが大好きだ。否、愛していると申してもいいであろう。ゆえに、かならずやおぬしのもとに戻ってくる」
「はい?おれをあんなにいじりたおしたりいびりたおしているのに?」
「愛しているからこその行動だ。それがにゃんこだ。それを申すなら、副長もだな。おぬしを愛しているからこそ、いびりたおしておられる」
「ちょっ……。そんな小学生男児みたいな心理状態、あの二人にかぎってはありえないでしょう?」
「そして、おぬしもだ。おぬしも二人を愛しすぎていて、いびられたりいじられたりすることがうれしくなる。快感になっていると申しても過言ではないな」
「はああああ?それってドMってことじゃないですか」
「さあっ、はやくお櫃を運んでくれ。みな、飯をまっている」

 俊春は、いつも以上に想像の斜め上を爆走しまくっている。

 釈然としないまま、おれはお櫃をいくつも抱えて厨をでた。

 入口で、相棒がおれをじとーっとみつめているので、「相棒っ、おれはみんなから愛されているみたいだ」っていっておいた。

 相棒がどう思ったかはわかるはずもない。

 厨から大広間にいくまでの廊下で、宿のと道場主の奥方と娘さんに会った。

「ほんとうにおいしい料理ばかりでした。宿の料理人たちも、これからお客様におだししたいと申しております」

 宿のも絶賛してくれたし、母娘も大絶賛してくれた。

 ふふん。これも「食の伝道師」たるおれの偉業の一つだな。

 思わず、胸をはってしまった。すると、隣で恐縮している俊春が、呆れたようなを送ってきた。

 道場主の奥方と娘さんは、そろそろおいとまするという。

「ならば、送りましょう」
「ええ?なにも副長みずからいかなくっても。送り狼になりかねませんし」

 送るっていいだした副長にツッコんでしまった。もちろん、後半部分は口のなかでつぶやくにとどめておく。

「なんだとこの野郎?」
「わたしがまいりますよ。ぽちの料理をたらふく堪能しましたので、腹ごなしをせねば。それに、美しい女性二人で夜半にあるきまわるのは危険きわまりありませぬ」

 副長によまれるにきまっている。もうすこしで拳固か平手打ちを喰らいそうになった。

 なんとそのタイミングで、廊下の角をまわって野村があらわれたではないか。

 なんだって?めっちゃドンピシャなタイミングじゃないか。まるで、女性二人がかえるのを見計らってやってきたみたいだ。

「あああ?利三郎、送るっつーおまえが危険きわまりないんだよ」

 野村と目糞鼻糞のイケメンは、振り返って怒鳴り散らす。

「わたしが送ります」

 そのとき、また一人廊下の角を曲がってあらわれた。
  


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2023年09月05日

いる。あぁ無論、主計

いる。あぁ無論、主計の大好きなことじゃねぇ。剣術だ」
「ちょっ・・・・・・。副長、誤解を招くようないい方はやめてください」

 おれの大好きな、もとい、大尊敬する伊庭だけでなく、薩摩の間で「相馬主計は変な奴」、あるいは「そっち系らしい」って、噂になったら大変だ。しかも、いまだに衆道文化まっ盛りの薩摩である。おれみたいないたいけなは、かっこうの獲物になるだろう。
 
 それこそ、貞操を奪われ、傷物にされてしまい・・・・・・。

 そんなことになったら、おれはもうお婿にいけないだろう。
 それから、伊庭にあわせる「安心せー。
https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/0348f6d97998b879ad8c5d478c4b81c2 https://blog.naver.com/nav3656/223187993919 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/08/20/002528?_gl=1*1ayivoz*_gcl_au*NDk5MTMyMTEwLjE2OTI0NTg3NDE.&_ga=2.163505788.1346484587.1692458757-1844386703.1692458757 薩摩兵児は、強か、つまり、おなじ薩摩兵児しか抱きもはん」
「ええええっ!」

 いつの間にか半次郎ちゃんが横に立っていて、そうぼそりとつぶやかれてしまった。

 よまれたばかりか、そんなことをいってくるなんて・・・・・・。
 いろんな意味で、ショック大である。

「ひいいいいっ!超ウケる」

 永倉は、砂の上にうずくまるほどウケている。

 ってか、おれは、薩摩人からすればへたれなんだ。

「と、いうわけだ。ぽち、愉しんでくれ。一人をのぞいて、この面子だ。ちょっとは愉しめるであろう。一応、渡しておく。おまえのだ。指一本でいけるところでも、相手の矜持を傷つけるようなことは本意ではなかろう?」

 副長は、おれのショックをよそにさっさと話しをまとめている。
 口の形をおおきくして俊春にそう告げた後に、左腰から愛刀の「兼定」を鞘ごと抜いて俊春に差しだす。

 なるほど・・・・・・。
 
 副長は、俊春に気分転換をさせたいわけだ。半次郎ちゃんの本意に添い、それを利用して俊春を愉しませようと・・・・・・。

 じつに、副長らしいアイデアじゃないか。

 ってか、『一人をのぞいて、この面子』?

 なるほど・・・・・・。
を向ける。それから、じつにうれしそうな笑みを浮かべた。

「かようにうまい料理、喰らってよいのでしょうか?傲慢で自分勝手で日の本、否、この世のなかで一番くそったれの兄に、このことがしられでもすれば、わたしは殺されてしまうでしょう」

 かれはおれたち全員にをはしらせてから、脚許でお座りしている相棒をみおろし、頭をなでた。それから副長にを戻し、ささやくように予言する。

「そりゃぁ大変だ」
「たしかに、大事だ」
「ってか、たしかにありえそうですね、それ」

 副長と永倉とおれの言葉がかぶった。

「案ずるな。だれも告げぬであろうよ。すくなくとも、ここにいる面子で、この後たまに会うのは、おれと主計、それから兼定だけだ」

 俊春は、副長の中途半端な気休めに素直にうなずく。

「あっ、たまというのは、あなた方が「眠り龍」と認識している、俊冬殿の二つ名です」
「気分屋で、手に負えぬにゃんこです」

 薩摩勢へ補足説明をすると、俊春がさらに補足してきた。ってか、必要ないのに、俊冬がいないからといってしまくっている。

 兄がいなくて力がでないはずなのに、悪口になるとパワー全開するらしい。

 正直、ここでうまい料理を喰らうことより、兄貴にたいして悪口雑言のかぎりをつくしまくったことのほうが、殺害の動機になると思うのだが。

「では、遠慮なくお借りいたします」
「はやく借りちまえ、ぽち。土方さんがいらぬ気を起こすまえにな」」を帯びる。

 そして相棒に、副長のもとへゆくよう合図送ってから、うしろへ飛び退った。

 たいしてバネをきかしたようにはみえなかった。
 ただフツーに立っている姿勢からである。しかも脚場が砂という悪条件で、かれはゆうに7、8mはうしろへ飛んだのである。

 これだけで圧倒されてしまう。

 黒田が口笛をふいた。
で、俊春をにらみつけている。

「あんなのは、ぽちにすればなんでもないことだ。半次郎ちゃんは身にしみてわかっているだろうが、あいつの強さは、あんたらが想像している以上、否、はるかかなたのものだ。それこそ、武神ってのがいるとすれば、まさしくそれだ。一人一人かかっていったところで、しょせん、糞の役にも立ちゃしない。おれと主計が囮になるから、あんたらはできるだけ間をおかずに攻めたててくれ」

 永倉の提案は、意外にもすんなり受け入れられた。黒田あたりが、「おまえの申すことなど、きいてたまるか」的なことをいうかと思いきや、素直にうなずいている。

 黒田もふくめ、三人とも永倉の力もまた、認めているにちがいない。
 三人とも、わかっているんだ。

 永倉もまた、すごい剣士だということを。

 そして、おれたちはいっせいに腰から得物を抜き放った。

 ちらりと薩摩勢に
「いまん、みたか?すげじゃなかと?」

 かれは同意を求めるように、半次郎ちゃんと有馬を振り返る。が、二人ともマジな

 永倉のいうとおりである。副長には、ぜひとも立会人としてこの戦いを見守っていていただきたい。

 永倉とおれの切なる願いのなか、俊春は副長から「兼定」を受け取った。
 それから、かれはそれを眼前にかかげた。しばし瞼を閉じ、祈りか感謝かをつぶやいてから左腰に「
 俊春は、副長の口許からおれたちへ
  


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2023年07月11日

「すまぬな。

「すまぬな。なにせ、おれたちはいなくなるから・・・。ところで、土方さんのことをきいていいか?」

 永倉・・・。
 なんでそこ、きいてくるかなぁ?

「副長のなにをです?ああ、女性関係のことですか?」
「おいおい、主計。土方さんの女癖の悪さをきいたって、おれたちにはなんの価値もない・・・」
「副長も?副長も死ぬのか?」

 永倉をさえぎる斎藤の叫び。
 かれは、叫んでしまってから慌てて自分の口を掌でおおう。

「おいおい・・・。https://yvision.kz/post/984902 https://avisterry.futbolowo.pl/news/article/news-14 https://www.beclass.com/rid=274b0a16404477e1bac5 一番くたばらなさそうな土方さんが、死ぬ?」
「これも左之とおなじくらい、信じられぬ話しだな」

 なにゆえか、副長の死に関しては茶化す永倉と原田。

「副長が局長の跡を継ぎ、局長として転戦いたします。会津で斎藤先生との隊士二十名ほどが残ります。ちなみに、斎藤先生やたちは、敵軍と戦って全滅と思われていました。が、じつは生き残っていたというわけです。そして副長は、残りの隊士をひきいて榎本艦長や大鳥さんとともに蝦夷へ渡ります。最終的にはそこで・・・。その直後に、幕府軍は敗戦いたします」

 いっきに語ってしまう。

「ただ、遺体がみつかっていないのです。ゆえに、蝦夷からロシアに渡ったのではないのか、という説があります。もっとも、ほぼ戦死で間違いないでしょう」

 まるで、映画や小説のストーリーのネタバレである。
「なにゆえか、近藤さんのときとはちがって、驚きもなければ悔しさとか悲しみってのがないんだが」
「おれも。実感がないっつーか。嘘じゃないんだろうが、嘘っぽいつーか」
「わたしもだ。わたしが驚いたのは、「うっそだー」という意味での驚き。副長が死ぬなんてこと、神仏がいなくなるのと同様、ありえぬ」

 組長たちの見解。いや、まさかの断言。しかも、斎藤の「うっそだー」は、かれらのきっぱりとした断言よりも衝撃的である。

 なんじゃそりゃ?

 突っ込みたくなるのは当然のこと。 

「土方さんも、生きのびるさ。あらかた、その準備もちゃんとやってたろ?」

 原田の推測に、ふと思いだす。

「そういえば、そのまえに愛刀と写真を、鉄に託して実家へと送りだします」
「ほらみろ。それだよ、それ。こすい土方さんらしい」
「ああ、左之の申すとおり。土方さんのだよ。まぁ、鉄を離脱させる恰好のでもあったんだろうが」
「新八さん、一石二鳥ってやつですね。銀は?」
「斎藤先生、銀も大丈夫。生き残ります。さきにもお話した通り、子どもたちのなかでは、良三だけが死ぬはずでした」

 そのため、沖田や藤堂と一緒に、丹波にいかせたのである。

「まっ、それをきいて、土方さんのことは安心した」
「いや、ちょっとまってください。なにゆえ、そこまで確信できるのです?」

 原田の結論どころか、三人ともすっかり安心している。これはもう、長年、一緒にやってきているからわかってるんだよ、のレベルをこえている。
「土方さんだからだ」
「土方さんだからに決まってるだろう」
「副長ゆえ」

 永倉、原田、斎藤の答えがかぶる。

 もう、いうべき言葉もない。

「それで、主計。おまえは?」
「おれですか?おれも生き残りますよ」

 永倉に問われて、答える。

「そりゃ、おかしいだろう?」
「おまえが、生き残る?」
「それは・・・。その説はいただけぬ」
「ちょっ、なにゆえ、おれは生きてちゃおかしいんです?」

 それまで、ひっそりとなりゆきをみまもっていた双子が、ぷっとふきだした。
 組長たちも笑いだす。もちろん、おれも。

「俊冬、なにゆえ髪を伸ばしている?」

 永倉が、笑いをおさめてからマジなで問う。俊冬は、すこしはなれた木のまえで弟と立っている。

 そういえば、町人髷からみじかく刈り揃えていたのに、いまはそのまま伸ばしつづけているようである。俊春のほうは、おれとおなじく丸刈りが好きなのか、昔の高校球児みたいにしている。
 あ、もしかすると、この丸刈りが俊春を双子の兄より若くみせてるいのかもしれない。

「髪?わたしは弟とちがい、頭のなかより外の形が悪いのです」

 平然と答える俊冬。

「髪が伸びてきたら、どことなく副長に似ているな」
「まさか、ポスト土方を狙っているんじゃないでしょうね?」

 斎藤にのっかり、からかってみる。

「ポスト?その意味はわかりかねるが、わたしが副長を真似る必要があるか?わたしはわたしで、そこそこの見栄えだと思っておるのだが?イケメンの主計君」

 くそっ!やり返された。

「おいっ!」

 あっ、と思う間もなく、永倉が双子までの間を詰め、俊冬の着物の袷をつかんでいた。

「おいおい新八、またか?」

 それにいちはやく原田が気がついていた。すでに二人にちかづいている。

「殴るのはなし、だ」
「わかってる」

 原田が永倉の
  


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2023年05月03日

にも態度にもありあ

にも態度にもありありとでている。

 局長、副長、おれと、順にきちんと自己紹介したのち、向こうが名乗ったが、ぞんざいに名を名乗っただけである。役職すら告げなかった。

 たまたま、覚えていただけである。もしかすると、記憶違いかもしれない。

 すくなくとも、酒井、小栗、松平、勝、大久保は間違いない。
 依田については、だれかのブログで、かれが副長に、京での戦の様子を尋ねたと記載していたのをみた記憶があるので、勝手にご意見番にしただけである。

 ただ、小栗だけはちがった。かれだけは、まず、きちんと役職を告げ、名乗り、これまでの労をねぎらってくれた。
から、こちらをなめてかかっている。https://www.easycorp.com.hk/en/offshore Bank Account Opening hong kong audit services 見下しているオーラどころか、がいる。

 どの役職も、これが江戸幕府最後の役職であることは、いうまでもない。 

 たぶん、そうそうたるメンバーなんだろう。。
 それから、ご意見番として、、外国事務総裁の、会計総裁の、陸軍総裁の勝海舟、海軍総裁の、陸軍奉行並や勘定方を兼任する これではまるで、落とす気満々の集団面接である。

 左右に分かれて座しているかれらの間に、局長と副長が並んで座し、そのうしろ1mほどあけて、おれと双子が座している。

 双子から、「かまわないから、睨みつけていろ」といわれているので、左右に居並ぶ重役陣のネクタイの位置ではなく、を順にみてゆく。

 ざっとみて、抗戦派は小栗だけであろう。かれは、この数日のうちに罷免される。

 じつは、かれや榎本ら数名で、将軍に抗戦を直訴し、退けられている。

 ほかの幕閣にとって、いまや小栗は導火線のようなもの。
 かれの有能さは、政治的手腕だけにとどまらない。先見の明があり、戦略にも明るい。

 あの長州の「でこちんの助」、もしくは「でこぴん野郎」こと、大村益次郎をもってして、小栗の才を怖れていたという。

戊辰戦争ののち、『かれが罷免されなかったら、新政府軍の東征は成功しなかったであろう』、と語ったという。

 その小栗とがあった。向こうから、にっこり笑って軽く会釈をよこしてくる。もちろん、こちらもおなじようにかえす。

 線が細く、ぱっと見、現代の落語家のだれかに似ている気がする。

 とてもいい人っぽい。実際、ウイキペディア等では、かれは誠の武士で、誠の忠義を貫き通した、と記載されている。

 そして、いまからさほど遠くない、新政府軍のいいがかりともいえる罪状で斬首される。

 複雑な気持ちになる。

 はっと気がつくと、だれかのブログにあったとおり、依田が副長に、京での戦、つまり、「鳥羽・伏見の戦い」について尋ねている。

 それに、よどみなく答える副長。
 そして、やはりブログにあったとおり、「これからは刀や槍の時代ではなく、銃火器の時代である」、と熱く語る副長。

 欠伸を噛み殺している者、『今夜のおかずはなにかな』と考えている者、『いつおわるんだ、これ?寒くてたまらん。ステテコはいてきたらよかった』って思ってる者がいる。

 つまり、国会討論会のごとく、みな、まともにきいちゃいない。

 依田の質問がおわった。どの質問もたいしたことはない。すでに、かれらの耳にはいっているはずのことの、焼き直しってやつである。

 正直、依田の的外れの質問より、副長の答えのほうがはるかに立派だったし、ためになった。
 依田は、幾度も「ちっ」というになっていた。

 小栗は、ソーラーで動く首振り人形みたいに、ずっとうんうんうなづいていた。

 あの勝ですら、苦虫をつぶしたようなで、うつむいていた。
 きっと、副長の明晰さに舌を巻いているはず。イケメンに、ではなく。

 そして、ついにはじまる。

 いびりっていうのか?パワハラっていうのか?兎に角、いっせいに質問を、っていうか、攻撃してきたのである。
  


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