2021年07月24日
『うん、気付いた
『うん、気付いた。これからゆっくり食べるね。わざわざありがとう。』
「ううん、あのね、赤ちゃん順調だったよ。その報告のついでに顔を見に行って、久し振りに倫也さんの会社も見たくなって、お弁当は理由が欲しかっただけだから気にしないで。」
『順調か、良かった。今度はゆっくり部屋で待ってて。帰りも送れると思うし。』
「う〜ん……考えとく。」
『なんで?』
「いろいろ?あ、暑いから切るね?」
『まだ外だよな?少し涼んで帰って。喫茶店とかない?」
「うんとね、コンビニがある。倫也さんの好きなチョコアイス買って行くから許してね!!」
ピッ!!
と強制的に通話を終わらせて、コンビニに戻り、アイスを4個を買い溶ける前に帰るのがミッションになった。
帰宅してソファでアイスを一個食べながら、自分に落ち度があったのか、と反芻して考えてみた。
「………ない!どう考えても私の対応が不味かったとして、いきなりの訪問で悪いとしても秘書でしょ?お仕事の邪魔だったにしても、あの人、仕事してた?お茶淹れただけじゃない、仕事。その後はソファに座って聞いてもいない事をペラペラと。内容が会社の事だったらダメじゃない?それに秘書が妻に話す事?………ううん、仕事の邪魔をしたとしても話す事じゃないわよね?」
(何であんな人が秘書なのよ!しかもそんな話聞いてもいないし!!)
プン!!と怒りながらアイスを口入れると、甘い濃厚ミルクの味が広がる。
「んー♪美味しい……怒って食べたら勿体ない。今は忘れようっと。」
一口またアイスを口に入れると、お腹の中でボコボコッと赤ちゃんが動いた。
「いたた……アイス美味しかった?嬉しい?でも少し軽めでお願いしますね?」
動いた辺りを撫でると、手のひらにボコッとした感触が伝わった。
倫也が帰宅して、ニコニコの笑顔でお弁当箱を渡してくれた。
「美味しかった。」
「良かった!お夕飯、食べる?冷蔵庫に入ってる。」
「いいよ、自分で準備する。」
「そう?ありがとう。」
お礼を言いながらお弁当箱を洗い始めると、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「倫也さん?どうしたの?」
「んー。宇佐美さんが倫子が部屋で待ってますよーって言うから急いで行ったらいないから……寂しかった。でも座ろうと椅子を引いたらお弁当箱が置いてあって、机の上にメモがあって嬉しかったなって。ありがとう。本当にまってて良かったんだよ?」
水切り籠にお弁当箱を伏せて、クルッと倫也の方を向くと首に手を伸ばしてぶら下がる様に抱き着いた。
倫也も支える様に腰にそっと腕を回した。
「そうしようと思ってたんだけど…お仕事の邪魔かなって…。ごめんね?急に連絡しないで行って。」
「いつでも来て。嬉しい。」
「ありがと。お味噌汁温めるね。倫也さん、おかず温めて。」
オッケーと冷蔵庫を開けた倫也を見ながら、お夕飯タイムは質問タイムだな、と倫子は目論んでいた。
「いただきます!」
嬉しそうな倫也を前に、倫子もお茶とヨーグルトを置いてお付き合いでダイニングテーブルに座っていた。
(さて…何から聞こうかな。)
帰宅してから倫子はネットを検索した。
本にも載っていた、夫が浮気する時、魔が差す時、それは妻の妊娠中が多いと!
それを見て警戒するに越した事はないと考えたのだった。「ねぇ、倫也さん。部屋に入れてもらっちゃったけど、秘書の方がお茶を出してくれたよ。」
「ん、ああ。聞いた。いきなり帰ると言われたって、用事があるからと言ってましたって。」
「ふぅん。」
(そんな事一言も言ってないけどなぁ。)
少し不満な顔が表情に出ていたのだろう。
心配そうに倫也が食べていた箸を止めた。
「倫子?何か言われた?」
「秘書さんに?…言う人なの?」
「いや?」
(ふぅん…。)
「ねぇ、前は居なかったじゃない?秘書さん。びっくりしちゃった。副社長なんだなぁって実感した。いつから?」
「あ、ああ。スケジュールが厳しくなって来てね。変更も多いから社長推薦でお試し期間中だよ。派遣登録だったから正式に社員になってないんだ。秘書検定取ったらしくて丁度いいって話になったらしい。予行練習みたいなものかな。」
食事を開始して倫也は普通に話してくれた。
「お試し期間って、終わったら本採用?決まってるの?それは誰が決めるの?」
「んーそうだなぁ。推薦した社長と俺かな?出来る人なら派遣したいけどね。会社としては。」
「倫也さんの基準が分からないけど、どんな秘書がいいの?」
「そうだなぁ、これっていう基準はないけど、一緒に仕事をする訳だしスケジュール管理だけとはいえ、話しやすい、親しみやすい、疲れない人がいいかな。仕事で疲れて補佐してくれる人で疲れたら倍疲れるから、そこは遠慮したいかな?」
「……へ、へぇ〜。」
「どうした?」
「ううん、あ、お茶入れるね。」
席を立ち、顔が引き攣るのを倫子は隠して笑顔でお茶を運んだ。
片付けを二人でして、倫也がお風呂へ行くと、倫子は先に寝るねと寝室に入った。
(やばい!やばいぞ!!疲れる人、それ私だよね?完全に私だよ!)
頭を抱えてベッドに横座りした。
自分の妊娠初期の頃を思い出すと、家では泣いて怒って、小さな事で浮気を疑ったり責めたりしてた。
(出て行ってとか仕事行っちゃえとか、禿げろとかばかとか…やばい!)
思い出せば出すほど痛い人で、疲れる妻だ。
恐々、スマホを手にもう一度検索をする。
[妻の妊娠中に夫が浮気!]
[これで妊娠中の浮気を発見!]
「と、倫也さんに限って…ねぇ?」
スマホ画面を見つめながら蘇ったのはあの映像。
思い出したのは、心から信頼して大好きだった恋人と永遠の友情を信じた親友との浮気現場だった。
(倫也さんに限って……。)
ーーー「奥様よりは倫也さんに近い分、話は合うみたいです。好きな音楽とか昔見た映画とか、倫也さんは予定を確認した後、数分を私との会話で過ごされて、緊張が取れる、安らぐと言って下さるんですよ。」ーーー
武藤の声が思い出されてベッドに潜り込んだ。
「ううん、あのね、赤ちゃん順調だったよ。その報告のついでに顔を見に行って、久し振りに倫也さんの会社も見たくなって、お弁当は理由が欲しかっただけだから気にしないで。」
『順調か、良かった。今度はゆっくり部屋で待ってて。帰りも送れると思うし。』
「う〜ん……考えとく。」
『なんで?』
「いろいろ?あ、暑いから切るね?」
『まだ外だよな?少し涼んで帰って。喫茶店とかない?」
「うんとね、コンビニがある。倫也さんの好きなチョコアイス買って行くから許してね!!」
ピッ!!
と強制的に通話を終わらせて、コンビニに戻り、アイスを4個を買い溶ける前に帰るのがミッションになった。
帰宅してソファでアイスを一個食べながら、自分に落ち度があったのか、と反芻して考えてみた。
「………ない!どう考えても私の対応が不味かったとして、いきなりの訪問で悪いとしても秘書でしょ?お仕事の邪魔だったにしても、あの人、仕事してた?お茶淹れただけじゃない、仕事。その後はソファに座って聞いてもいない事をペラペラと。内容が会社の事だったらダメじゃない?それに秘書が妻に話す事?………ううん、仕事の邪魔をしたとしても話す事じゃないわよね?」
(何であんな人が秘書なのよ!しかもそんな話聞いてもいないし!!)
プン!!と怒りながらアイスを口入れると、甘い濃厚ミルクの味が広がる。
「んー♪美味しい……怒って食べたら勿体ない。今は忘れようっと。」
一口またアイスを口に入れると、お腹の中でボコボコッと赤ちゃんが動いた。
「いたた……アイス美味しかった?嬉しい?でも少し軽めでお願いしますね?」
動いた辺りを撫でると、手のひらにボコッとした感触が伝わった。
倫也が帰宅して、ニコニコの笑顔でお弁当箱を渡してくれた。
「美味しかった。」
「良かった!お夕飯、食べる?冷蔵庫に入ってる。」
「いいよ、自分で準備する。」
「そう?ありがとう。」
お礼を言いながらお弁当箱を洗い始めると、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「倫也さん?どうしたの?」
「んー。宇佐美さんが倫子が部屋で待ってますよーって言うから急いで行ったらいないから……寂しかった。でも座ろうと椅子を引いたらお弁当箱が置いてあって、机の上にメモがあって嬉しかったなって。ありがとう。本当にまってて良かったんだよ?」
水切り籠にお弁当箱を伏せて、クルッと倫也の方を向くと首に手を伸ばしてぶら下がる様に抱き着いた。
倫也も支える様に腰にそっと腕を回した。
「そうしようと思ってたんだけど…お仕事の邪魔かなって…。ごめんね?急に連絡しないで行って。」
「いつでも来て。嬉しい。」
「ありがと。お味噌汁温めるね。倫也さん、おかず温めて。」
オッケーと冷蔵庫を開けた倫也を見ながら、お夕飯タイムは質問タイムだな、と倫子は目論んでいた。
「いただきます!」
嬉しそうな倫也を前に、倫子もお茶とヨーグルトを置いてお付き合いでダイニングテーブルに座っていた。
(さて…何から聞こうかな。)
帰宅してから倫子はネットを検索した。
本にも載っていた、夫が浮気する時、魔が差す時、それは妻の妊娠中が多いと!
それを見て警戒するに越した事はないと考えたのだった。「ねぇ、倫也さん。部屋に入れてもらっちゃったけど、秘書の方がお茶を出してくれたよ。」
「ん、ああ。聞いた。いきなり帰ると言われたって、用事があるからと言ってましたって。」
「ふぅん。」
(そんな事一言も言ってないけどなぁ。)
少し不満な顔が表情に出ていたのだろう。
心配そうに倫也が食べていた箸を止めた。
「倫子?何か言われた?」
「秘書さんに?…言う人なの?」
「いや?」
(ふぅん…。)
「ねぇ、前は居なかったじゃない?秘書さん。びっくりしちゃった。副社長なんだなぁって実感した。いつから?」
「あ、ああ。スケジュールが厳しくなって来てね。変更も多いから社長推薦でお試し期間中だよ。派遣登録だったから正式に社員になってないんだ。秘書検定取ったらしくて丁度いいって話になったらしい。予行練習みたいなものかな。」
食事を開始して倫也は普通に話してくれた。
「お試し期間って、終わったら本採用?決まってるの?それは誰が決めるの?」
「んーそうだなぁ。推薦した社長と俺かな?出来る人なら派遣したいけどね。会社としては。」
「倫也さんの基準が分からないけど、どんな秘書がいいの?」
「そうだなぁ、これっていう基準はないけど、一緒に仕事をする訳だしスケジュール管理だけとはいえ、話しやすい、親しみやすい、疲れない人がいいかな。仕事で疲れて補佐してくれる人で疲れたら倍疲れるから、そこは遠慮したいかな?」
「……へ、へぇ〜。」
「どうした?」
「ううん、あ、お茶入れるね。」
席を立ち、顔が引き攣るのを倫子は隠して笑顔でお茶を運んだ。
片付けを二人でして、倫也がお風呂へ行くと、倫子は先に寝るねと寝室に入った。
(やばい!やばいぞ!!疲れる人、それ私だよね?完全に私だよ!)
頭を抱えてベッドに横座りした。
自分の妊娠初期の頃を思い出すと、家では泣いて怒って、小さな事で浮気を疑ったり責めたりしてた。
(出て行ってとか仕事行っちゃえとか、禿げろとかばかとか…やばい!)
思い出せば出すほど痛い人で、疲れる妻だ。
恐々、スマホを手にもう一度検索をする。
[妻の妊娠中に夫が浮気!]
[これで妊娠中の浮気を発見!]
「と、倫也さんに限って…ねぇ?」
スマホ画面を見つめながら蘇ったのはあの映像。
思い出したのは、心から信頼して大好きだった恋人と永遠の友情を信じた親友との浮気現場だった。
(倫也さんに限って……。)
ーーー「奥様よりは倫也さんに近い分、話は合うみたいです。好きな音楽とか昔見た映画とか、倫也さんは予定を確認した後、数分を私との会話で過ごされて、緊張が取れる、安らぐと言って下さるんですよ。」ーーー
武藤の声が思い出されてベッドに潜り込んだ。
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2019年10月04日
気のせいか、一人一人やけに大きく見える。当然身体
" 気のせいか、一人一人やけに大きく見える。当然身体の大きさ自体もあるだろうが、そこにはもうひとつ、甲賀には無い確固たる自信があった。今年こそ甲子園へ。遠江とあたるまで負ける訳がないという自信が、滋賀学院ナイ院ナインの身体を一回り大きく見せていた。
「ええ顔つきしとんの。相手にとって不足なしじゃ」
道河原がにんっと笑って、皆が各々のグローブを取ろうとベンチに入った時だった。
副島と藤田を除く全員が咄嗟に三塁側へ振り返った。
殺気……いや、違う。甲賀者たちは鋭い忍の気を悟った。
力を内に秘めると、普通の人間にはその人の秘められた力は分からない。だが、忍には分かる。大きな力を内に秘めるには、より絶大な力が必要となる。内に閉じ込められる力とそれを抑える力、その相反する大きな力が拮抗するところに見えない気が満ちる。それが忍にしか分からない忍の気だ。
背番号18をつけた選手がグラウンドに深く一礼をし、ほんの一瞬だけ一塁側ベンチへ目を向けた。その一瞬で背番号18は一塁側めがけて殺気を放った。その気は目に見えぬ稲妻と化し、一塁側を襲った。
「うっわ、何やこれ! メガホン壊れたぁ!」
甲賀ベンチの上からそんな応援団の声が響いた。
「伊香保……一人とんでもないやつがいるぞ」
白烏が呟くと、伊香保は首を傾げていた。"
「ええ顔つきしとんの。相手にとって不足なしじゃ」
道河原がにんっと笑って、皆が各々のグローブを取ろうとベンチに入った時だった。
副島と藤田を除く全員が咄嗟に三塁側へ振り返った。
殺気……いや、違う。甲賀者たちは鋭い忍の気を悟った。
力を内に秘めると、普通の人間にはその人の秘められた力は分からない。だが、忍には分かる。大きな力を内に秘めるには、より絶大な力が必要となる。内に閉じ込められる力とそれを抑える力、その相反する大きな力が拮抗するところに見えない気が満ちる。それが忍にしか分からない忍の気だ。
背番号18をつけた選手がグラウンドに深く一礼をし、ほんの一瞬だけ一塁側ベンチへ目を向けた。その一瞬で背番号18は一塁側めがけて殺気を放った。その気は目に見えぬ稲妻と化し、一塁側を襲った。
「うっわ、何やこれ! メガホン壊れたぁ!」
甲賀ベンチの上からそんな応援団の声が響いた。
「伊香保……一人とんでもないやつがいるぞ」
白烏が呟くと、伊香保は首を傾げていた。"
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2018年11月07日
「ここは、やはり、大津撤退の折の隆行殿を見習い、鋒
「ここは、やはり、大津撤退の折の隆行殿を見習い、鋒矢(ほうし)の陣で敵陣を切り裂き混乱させてはどうか。」このような調子で進む軍議が少し続くと、「総大将の意見もお聞かせ願いたい。」海外轉運と、矛先が隆行に向いてきた。隆行は、「ふむ。」と、一度座りなおして諸将を見ると、「此度の戦い、地形は山間の平野でおこなう。敵方、西園寺は、この土地に詳しい。」状況から説明し始めた。「それ故、それを逆手に取っては如何であろうか。」「逆手?」誰ともなく相槌が返ってくる。「うむ。まともにぶつかっても、勝算は十分あるが、出来る限り戦死者を出したくは無いからな。」その隆行の言葉に、諸将は困惑した表情を浮かべ始めると、「それは…、ここにいる皆も同じ想いですが…。」「具体的には、どのようにするおつもりでしょうか?」諸将は当然のように質問をした。。
2018年11月07日
この知らせに隆行は、(分かりやすいように歩
この知らせに隆行は、(分かりやすいように歩いて来て良かった。)内心、ほっとして、「敵の兵数は…?」と尋ねた。「およそ3000。敵方も兵力をかき集めたようです。歐洲集運(よし。ここまでは、思惑通り。)「分かった。ご苦労。引き続き、情報を探ってくれ。」「ははっ。」そう言って影が消えると、隆行は、軍議を開くために諸将を集めた。そして、諸将が陣幕に集まると、放っていた斥候が飛び込んでくる。「申し上げます!敵方、西園寺家が、三間の地に結集しております!その数、およそ1500!未だ数を増しております!!」斥候の報告は、侘茶屋の諜報部隊よりも少し精度の低い情報である。(重盛殿の手塩にかけた諜報部隊は本当に優秀だな…。)隆行は、そんな事を考えながら、「そうか。ご苦労。引き続き頼む。」と、言うと、軍議を開始させた。
2018年11月07日
入ってくる報告は軒並み敗戦の報告ばかりで、勝ち戦の
入ってくる報告は軒並み敗戦の報告ばかりで、勝ち戦の話は皆無であったのである。長宗我部方面の戦線は、連敗に次ぐ連敗で、兵の大半が死亡してしまい投降する兵もあとを絶たない。唯一、筆頭家老億嘉國際ある土居宗珊が、敗残兵をまとめあげて前線の城に篭(こも)り、長宗我部家の本隊を抑えてはいるが、既に、長宗我部の放った別働隊が苛烈な進撃で次々と一条家の城を落とし、この中村御所を攻撃中だったのである。攻めたはずが、痛烈なカウンターをもらった状態となり、攻めるどころか領土の防衛すらままならない状態で、主君一条兼定の生死すら不明な状況であった。また、西園寺家との戦線については、土居隆行率いる軍勢が、三間でおこなわれた初戦で西園寺家に惨敗を喫した上、逃げ延びられた者すらおらず、将と呼べる人物は皆戦死したという情報が入っていたのである。「この中村御所の防衛を任されていた守備兵も、もう殆ど生きておらぬらしい…。加久見左衛門様が城で戦っておるらしいが…いつまでもつものかのぅ…。」「じゃが、あの土居家に来た大友家のお姫様…。枝里姫様と言うたか?あのお方が戦える町民を率いて奮戦しておるというではないか。」「何を言う。所詮女子と寄せ集めの烏合の衆じゃ。しかも、その衆に正規のお侍さん方が助けられているようでは、一条もこれで終わりじゃ…。」この老人達の話どおり、現在、中村御所では、場外で迎え撃ち、惨敗した正規の守備兵達に替わり、隆行の妻である土居枝里が町民や女中を奮起させ、必死に城を守っている状態であったのである。この敗色濃厚な一条家の領民に、もはや希望を託せる所は、この枝里率いる一団しか無く、戦を知る退役軍人達にとっては勝機が全く見えない状態となっていた。
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21:45
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2018年10月16日
「およそ50年程前の話です…。」と語り出し
「およそ50年程前の話です…。」と語り出したのは、若き日の又爺の武侠譚であった。その頃、この村は、その立地と造りから、倭寇の拠点の一つとなっていた。村へ掛かる税は、他の村と同じく、取く、取れる作物の半分を納めるという決して軽くは無い税であったが、早くから許兄弟が居座っており、その戦利品のおかげで、時々小さな喧嘩がありながらも、平和な日々を送っていた。それが、ある時。役人の配置替えがあり、この村に圧し掛かっていた税が一気に跳ね上がるという事があった。取れる作物の、9割を税として取られるという暴税で、村人達は、飢える事を避けるため、収穫量を偽ろうとした。すると、役人が村に現れ、収穫量の偽装を許す変わりに、賄賂を渡すよう要求してきたのである。その賄賂は、凄まじく高く、とても払えなかった村人達は、何とか許してもらえるよう、役人に御願いをした。すると、役人は、足りない分を村の若い女で許してやる、と、村の女性達を次々と自らの屋敷に連れて行ってしまった。その事で、結局は、大量の税と賄賂で村の作物は、ほとんどが持っていかれ、その上、女性達までが連れて行かれてしまった。困窮した村人達を助けるため、居座っていた倭寇の海賊達は、次々に悪名の高い役人達の屋敷を襲い、その戦利品を村に流した。
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2018年10月16日
「およそ50年程前の話です…。」と語り出し
「およそ50年程前の話です…。」と語り出したのは、若き日の又爺の武侠譚であった。その頃、この村は、その立地と造りから、倭寇の拠点の一つとなっていた。村へ掛かる税は、他の村と同adrian chengく、取れる作物の半分を納めるという決して軽くは無い税であったが、早くから許兄弟が居座っており、その戦利品のおかげで、時々小さな喧嘩がありながらも、平和な日々を送っていた。それが、ある時。役人の配置替えがあり、この村に圧し掛かっていた税が一気に跳ね上がるという事があった。取れる作物の、9割を税として取られるという暴税で、村人達は、飢える事を避けるため、収穫量を偽ろうとした。すると、役人が村に現れ、収穫量の偽装を許す変わりに、賄賂を渡すよう要求してきたのである。その賄賂は、凄まじく高く、とても払えなかった村人達は、何とか許してもらえるよう、役人に御願いをした。すると、役人は、足りない分を村の若い女で許してやる、と、村の女性達を次々と自らの屋敷に連れて行ってしまった。その事で、結局は、大量の税と賄賂で村の作物は、ほとんどが持っていかれ、その上、女性達までが連れて行かれてしまった。困窮した村人達を助けるため、居座っていた倭寇の海賊達は、次々に悪名の高い役人達の屋敷を襲い、その戦利品を村に流した。
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2018年08月13日
紹鴎は、多少頑なっている則正の緊張を解すように、ゆ
紹鴎は、多少頑なっている則正の緊張を解すように、ゆったりとした口調で言葉を繋ぐ。「ところで、則正はん。侘茶屋とは初めて伺う名ですが…。」「はい。実は、まだ創業期でして、暖簾分けされたばかりなかりなのです。」紹鴎は、その返事に納得のいくところがあったらしく、「成る程。そら聞いた事もないはずですわなぁ。」と、ころころと笑い、「では、何故、侘茶屋という名にされたのですか?」「主人の意向です。主人が茶の湯に興味があるとの事ですが、なにぶん暖簾分け前は、下総の片田舎でしたから、溜まりに溜まった茶の湯への欲心が名となって表れたのでしょう。」「ほっほっほ。おもしろそうなご主人ですなぁ。」再び、ころころと笑う紹鴎に向かい、「付き合わされるこちらは、たまったものではありません。」緊張のとれてきた則正が下を向いて頭を掻きながら、アドリブを効かした。その直後、一瞬、紹鴎からの殺気のような冷酷な視線を感じて則正は凍りついた。(ワシは、今、いらん事言うたか?!)背筋を汗が伝わる。気軽な発言を後悔しながら、則正が凍りついていると、「如何なされはりました?」と、再び柔らかな声が落ちてきた。
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13:13
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2018年08月13日
(遂に一人になったか。)多少の寂しさを覚え
(遂に一人になったか。)多少の寂しさを覚えた隆行の右手側に城が見える。(ありゃ、桑名かな。仕事があると良いが。)隆行は、大きな館の周りにある小さな町に向かって歩を進めた。桑名桑名の城下町に入った隆行は、座(問屋)や商家、酒場などを覗いたが、その強面ゆえすべて門前払いされてしまった。気付けば既に夕方である。(参ったな。全額渡すなんて格好付けすぎたな。)既に、晩秋であり、夜の冷え込みが厳しくなる。しかし、宿に泊まる金も無い隆行は、2、3の民家の戸を叩いても、怖がって直ぐに閉められてしまった。隆行は、これまでもこの強面ゆえ、いろいろな場面で人から警戒されてきた。(まぁ、予想通りだけど、こりゃ、駄目だな。ここで小銭を作って行こうと思ったけど、ちょっと予定を変えるか。)隆行は、桑名の町を出て、山々の方へ足を向けた。既に周辺は闇である。幸い月が明るい。月光が照らしだす大地を隆行は一人黙々と歩いていた。途中、休憩を入れ、長島で用意してきた握り飯を腹に放り込むと、いくらか元気が沸いてきた。(下手に夜盗と間違われても厄介だ。)隆行は、村落を避けるように、夜中歩き続けると、朝になった頃、林に入って木の上で寝た。
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2018年08月01日
「脈なんか、見てただけの俺にはわかんねーよ!!」
「脈なんか、見てただけの俺にはわかんねーよ!!」「あぁ!!んだコラ!!!ワーワー喚いて、女みてえに騒いでんじゃねーよ!!」「誰が女だこの野郎!!」まさしく売り言葉に買い言葉。隼人隼人が隆行に掴みかかった。「やめろ。」すかさずGが二人の間に割って入る。「さっきの奴らにムカついとるのは全員一緒だ。」Gのその言葉に隼人は手を引っ込めると、隼人と隆行はバツの悪そうな顔をして俯いた。落ち着いた二人を見てGが言葉を続ける。「…それよりココは早く離れるべきだろう。」(…たしかに…)隼人も隆行も、冷静さを失っていたが、たしかにGの言うとおりである。先程の騎馬武者が人数を引き連れ戻って来る確率が非常に高い。三人の今までの経験が物語っていた。「そうだな。悪かった。隆行。」「いや、俺も悪かった。たっつんは俺が背負って行こう。隼人、手を貸してくれ。」隆行が、たっつんの足元に移動し、屈んだ。その時、Gが手を翳しながら「待て!」二人の動きを制止させ、耳を済ますと「…もう遅い」再び馬蹄の音が聞こえてきた。
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23:08
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